「昨年以上の賃上げ」「非正規処遇改善」「ベア」
経団連は7日、2016年春闘の経営側の交渉方針を示す「経営労働政策委員会報告」(経労委報告)の原案をまとめ、会長・副会長会議で提示した。榊原定征会長が既に表明した「15年を上回る年収ベースでの賃上げ」を促すほか、非正規社員について正社員への登用や時給アップなどの処遇改善も盛り込む方向で調整し、1月中旬に正式決定する。
報告書では、国内総生産(GDP)を600兆円に増やす政府の目標達成を経済界として後押しするため、「年収ベースで15年を上回る賃上げに踏み込んだ検討が望まれる」と明記する方向で調整する。基本給を底上げする「ベースアップ」も3年連続で容認する方針だ。
安倍晋三首相は、経済界との「官民対話」で、3年連続で賃上げを要請。これを受けて、榊原会長は11月26日、政府に対し「15年を上回る賃上げ」の方針を示した。円安や原料安を追い風に、企業業績は好調で15年春闘では大手企業で2.52%の賃上げ率だった。これは17年ぶりの高水準で、経団連は今回、さらに高い水準を求めることになる。例年に比べても速いペースで春闘方針の議論が進んでおり、会員企業の賃上げへの理解を深める思惑だ。
ただ、中国景気の減速を受けて、先行きの不透明感は強まっている。鉄鋼や建機業界では業績を下方修正した企業もあり、資源安で商社やエネルギー関連企業は収益が伸び悩む。業種によって業績にばらつきがあり、各企業がどこまで賃上げに対応できるかは不透明さが残る。榊原会長は7日の会見で、「あくまで各社の支払い能力によって判断してほしい」と述べた。
このほか原案には、子育て世代や若者に手当を出したり、ベアを手厚く配分したりすることを盛り込んだほか、非正規社員の正社員登用や女性活躍など賃金以外の処遇改善も提案している。
一方、組合側の連合は4%程度の賃上げを求めることを決め、経団連同様に非正規の労働条件改善を重点項目に挙げる。1月下旬には経団連と連合のトップ同士が協議して春闘は実質スタートし、労使双方の交渉が本格化する。【種市房子】