香港は中心部全体が工事中のようだった。どこへ行っても新しいビルを建てていたり、古いビルを改修していたりした。香港の人々のランチタイムである午後1時ごろになるとサラリーマンたちが通りにあふれ出て、足の踏み場がないほど混雑する。それでも東洋と西洋、過去と現在が混ざり合い、ごちゃごちゃしているのがこの街の魅力だ。香港で音楽専門チャンネルMnet主催の「Mnet Asian Music Awards(MAMA)2015」が一昨日行われた。MAMAは今年7回目を迎える授賞式とコンサートを兼ねた音楽フェスティバルだ。
仏パリのテロ事件以降、香港もコンサート会場などの警備が強化されている。今回MAMAの会場となったアジア・ワールド・エキスポ(AWE)の入り口には手荷物検査台が設置されていた。香港・韓国・中国・タイ・インドネシアの少女たちは警備員にバッグの中を開けて見せると、ペンライトや花を手に会場の中へ駆け込んでいった。中に入るとやはり香港の街中(まちなか)の雰囲気がする。複数の言語が入り混じって聞こえた。ステージに上がった韓流スターたちも韓国語・英語・中国語を混ぜて使った。会場を埋め尽くした観客1万人はほとんどが少女たちだった。彼女たちはのどが張り裂けんばかりに「BIGBANG」「SHINee」「EXO」と叫んだ。
BIGBANGがステージに上がり、「オレたちが一緒になって10年過ぎた」と言った時、メンバーの顔をあらためて見た。今も少年のような顔立ちだが、韓流やK-POPの歴史を刻んできた貫禄も見えた。EXOのメンバーは「全世界のファンの皆さん」という言葉を実に自然に使っていた。K-POPは韓国やアジアを越え、世界のファンと気持ちをやり取りするスターを育てたのだ。今回のイベントも16カ国で生放送され、インターネットやモバイル視聴を合わせると24億人が見たことになる。
「スタンディング席で立っていると、コンサート中にピョンピョン跳びはねているからか、翌日の朝は全身が痛くて起きられないんです」。4時間半にわたる公演を見た韓国の10代少女ファンの感想だ。この授賞式には何度も来た。公演中ずっと歌を歌い、叫んでいただろうに疲れた様子はなく、ただ満足げだった。
2009年に始まったMAMAはマカオ、シンガポールに続き、12年からは香港で開かれている。韓流で最大市場の中国を中心にアジアをターゲットにした選択だ。いつかは北京や上海でも開催できるだろう。中国はスマートフォン・メーカー「シャオミ(小米科技)」や電子商取引企業「アリババ(阿里巴巴)」の成功で既に世界の人々の生活に深く入り込んでいる。しかし、芸術と文化については多少事情が違う。表現の自由がベースになって創造性を存分に開花できる環境がなければ、K-POPのように世界の人々が共感できる文化を作るのに時間がかかるだろう。もしかしたらその点こそK-POPに与えられたチャンスかもしれない。