年間最高試合賞(ベストバウト)に輝いたのは11月15日、東京・両国国技館で行われた天龍源一郎(65)の引退試合、天龍VSオカダ・カズチカ(28)だ。
前代未聞だ。65歳選手の引退試合が年間ベストバウトに選出されることなど、今後二度とないだろう。中邑真輔―飯伏幸太戦(1月4日、新日本プロレス・東京ドーム大会)など4試合がノミネートされ、激戦必至と思われたが、1回目の投票で過半数を超える12票を獲得。過去8度のベストバウトとは意味合いが違い、ボロボロになるまで全力で戦い抜いた天龍の意地と心意気が評価された格好だ。
移動中に嶋田紋奈・天龍プロジェクト代表(32)から朗報を聞いた天龍は「正直言って驚いた。思わず親子でハイタッチしましたよ。今夜は女房(まき代夫人)とビールで乾杯します」と笑みを浮かべた。
9月にオカダとの一騎打ちが決まった後は「ベストバウトを狙う」と公言していたものの、内心は揺れていたという。
「狙うとは言ったが、相当なプレッシャーに襲われた。でもこれで肩の荷が下りた。技の攻防だけではなく、見てくれた人に勇気を与えるような試合ができたと思う」
試合数日後にはオカダから「パワーボムに挑戦する形になると会場がひとつになり、泣きながら応援する人もいて、これがプロレスだなって思いましたね」と感慨深い言葉も送られた。だが引退しても天龍は天龍。「カーッ、あの野郎。パワーボムをこらえながら会場を見渡す余裕があったのか。カメレオンみたいな野郎だな」との罵詈雑言も忘れなかった。
それでも見事に介錯してくれたレインメーカーには「あの年齢で3度目のMVPか…。これから周囲の期待にもがき苦しむ時期が必ず訪れる。その状況を突き抜けてこそ一流のプロレスラーだよ」と独特のエールを送った。
この日の夜はバラエティー番組に出演するなどタレントとしても多忙を極める天龍。本人も驚いた「最後のベストバウト」で、引退イヤーを鮮やかに締めくくった。
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