ドラギ総裁は今も「スーパーマリオ」、ドル安で一息ついた新興市場
2015/12/08 07:03 JST
(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は今も「スーパーマリオ」だ。少なくとも、ドル建て債務を抱えている新興国・地域にとってはそうだろう。
3日に発表したECBの追加緩和措置は投資家の多くを失望させ、ユーロが上昇しドルが下落したが、これは最近のドル高で苦境に立っていた新興市場の借り手にとっては一息つける展開だった。
国際決済銀行(BIS)は6日公表した報告で、世界のドル依存について警告した。米金融当局が事実上のゼロ金利政策を続ける間に、ドル建ての借り入れが膨らみ、BISによれば、米国外の銀行以外によるドル建て借り入れは4-6月(第2四半期)に9兆8000億ドル(約1210兆円)に上り、そのうち3兆3000億ドルが新興市場の借り手の債務だった。
米利上げに伴ってドルが上昇し続ければ、新興市場で問題が起こり幅広い金融・経済の不安定を引き起こすリスクがある。モルガン・スタンレーはブラジルや南アフリカ共和国、トルコ、マレーシアなどでリスクが高いとみている。
「一段のドル高は、近年にドル建て債務を膨らませてきた新興市場企業の返済能力をさらに試すことになる」とBISは指摘した。
モルガン・スタンレーの世界共同チーフエコノミスト、エルガ・バルトシュ氏は6日のリポートで、当初は市場を失望させたかもしれないが「ECBが今月の会合で市場の期待以上の措置を打ち出さなかったのは長い目で見ると良い戦略だったかもしれない」とし、欧州と米国の政策が乖離(かいり)しようとしている時に「一方があまり強く出れば、まだ脆弱(ぜいじゃく)な世界の景気回復が頓挫する恐れがある」と分析した。
原題:Draghi Still ‘Super Mario’ to Dollar-Thirsty Emerging Markets(抜粋)
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更新日時: 2015/12/08 07:03 JST