【コラム】日本の人口減少を解決するのはロボットではない-スミス
2015/12/08 09:14 JST
(ブルームバーグ):日本経済にとって長期的に大きな問題は人口動態だ。人口減少は生産性と1人当たり国内総生産(GDP)がまずまずのペースで伸びても、全体の成長率は低下、あるいはマイナスに落ち込むことを意味する。日本の債務は対GDP比率が先進国で最も高いので、返済はますます困難になる。高齢化社会はまた、年金生活者1人を少ない人数で支えることも意味する。
この問題解決のためのアイデアがこれまで数多く浮上した。例えばワーク・ライフ・バランス。女性が仕事か家庭かの二者択一を迫られなくなれば、出生率が上がると期待されてのことだ。企業統治改革は生産性向上につながるとされ、減少する労働者はロボットが取って代わると多くの人が信じている。それでも私は時折、どうして日本は移民の大量受け入れという選択肢を試さないのかと質問される。
米国やカナダ、オーストラリアにはこれが労働力不足を解決する自然な方法だろう。実際、米国の出生率は辛うじて人口維持できる水準なので、ここ数十年にわたって人口が毎年0.5-1%伸び続けている理由は移民が全てだ。ということは、人口が高齢化し減少する日本にもこれが自明の解決策にはならないのか?
これがそう単純ではない。日本の人口は向こう数十年に毎年50万人前後が減少すると予想され、これを補うには年に人口の0.5%近い移民が必要になる。しかも高齢化する人口に対応するには大胆な移民受け入れが必要で、これは日本が米国と同程度に移民に対してオープンになることを意味する。
伝統的に移民を受け入れてこなかった日本には極めて困難なことだ。日本は米国と異なり、出生地主義を採らない。このため、就労ビザで来日した外国人同士の子供が日本で生まれても、その子供は帰化の長いプロセスを踏まない限りは外国籍のままだ。在日韓国・朝鮮人や1980-90年代のブラジルからの「出稼ぎ」日系人労働者の問題から分かるように、日本語を話したり、日本文化になじんでいても日本国籍がないことで差別の対象になる。
日本が移民に消極的なのは、少なくとも人種差別の結果ではない。日本での差別の根本にあるのは国籍だ。
出生地主義の採用抜きに、人口減少に対応できる移民ブームが日本で起きることはないだろう。政権中枢を常に保守的な政治家が握っているとあって、この国の政策がすぐに大きく変わる確率は非常に低い。
法改正ということは、移民が日本を苦境から救う可能性は忘れた方がいいのだろうか。そうでもなさそうだ。高い技能を持つ労働者が減っていくことから、政府が高度人材としての外国人の受け入れに前向きであるからだ。昨年の法改正によって、高度専門職は日本での就労3年後に無期限の在留資格を得られるようになった。
こうした人材は大量に入ってくるわけではなく、個人ベースで入国するため、日本人と仲良くなったり結婚しやすいかもしれない。日本語も流暢(りゅうちょう)で、帰化のプロセスも容易になる可能性が高くなるだろう。日本企業で高いポジションに就いて仕事をするこうした人材の存在感が高まれば、日本社会は真の移民という考え方にゆっくりとではあるが順応していくかもしれない。ひいては、日本企業での差別的な雇用慣行が減り国民の移民政策への支持が高まることを期待したい。数十年すれば、日本はもっと移民の受け入れにオープンになっているかもしれない。(ノア・スミス)
(コラム の内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)
原題:Immigration Is a Tough One for Japan to Swallow: Noah Smith(抜粋)
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更新日時: 2015/12/08 09:14 JST