以前九州に行ったときに感じたのですが、九州の人って本州に比べて顔が短い人の割合が多い気がしています。顔というか、あごといってもいいかもしれません。私の九州出身の友人6人も見事に顎が短いタイプ。
下の図でいうと左。
もしその特徴というのが、弥生時代*1のものを現在まで残しているとしたら。
おい急にどうした、という感じでしょうが、まあ聞いてください。
私は関西に住んでる非関西人ですが、東京、北海道、九州、沖縄などに行く機会がそれなりにあり、駅に着いたときにそれぞれ、あ、顔が違うなと感じるのですよね。
日本人の地域差とルーツ問題って意外と各地あります。思いつくのでは、雪国の人は肌が白いとか、秋田はロシアがルーツだとか(本当かよ)、あと沖縄には内地顔と島顔っていうのがありますね。
私は民俗学や文化・歴史学に興味があって大学時代そんな授業ばかり取っていたのですが、今日たまたま大学時代のレポートを発見し、そこに九州の弥生人の頭蓋骨について意外とマトモなことが書いてありました。
それを簡単にまとめてみましたが、完全なる雑学です。話のタネは持っておいて困ることはなし。けっこうニッチなところだと自負していますので、良かったら忘年会にでも使ってください。使えないか・・・。
頭蓋骨を研究する意味とは
あなたは弥生人顔?縄文人顔?みたいなネタをたまに見ます。
そもそも頭蓋骨を調べて何の役に立つのか、という話ですが、これは日本人の文化やルーツに大きな影響を及ぼすんですね。
縄文人と弥生人の顔って、濃い薄いほぼ真逆。弥生人は今の韓国や中国辺りから来た人(渡来人)たちの血が入っていると言われます。これが渡来人説ですよね。朝鮮系の人たちが渡来して混血していったという。
ただ、調べると弥生人は時代や地域によってかなり差があり、実は骨そのものの形態が全く異なる人骨も出土しているのです。たとえば、九州西部~九州南部(今の鹿児島辺り)の弥生人は、ほぼ縄文人と同じような特徴を持ちます。
つまり、徐々に縄文人が変化していったか、大陸の形質や文化等が北部九州から流入したと推測できるわけ。
渡来説が本当か(こちらが今主流ですが)、それとも何らかの要因で進化したのか、はたまた両方か。弥生人骨の地域差を考えることは、大陸からの渡来の程度や当時の生活・文化などと深く関わっていると考えられていますので、日本について知る上で大意外と重要なのです。
☆☆わかりやすい やよいじんのちがい☆☆
そんな小難しいことはさておき。
主にその4県と中国地方出土の人骨を頭蓋骨の形状と身長・体系で比較すると、九州地方弥生人は主に3つのタイプに分類することができるらしいです。
※今のところ比較の対象にできる保存状態の人骨は九州で佐賀県・長崎県・福岡県・鹿児島県の一部でしか見つかっていないようです。
1、北部九州型(福岡周辺)
★高身長で、細長い顔。脚が発達している。
・弥生人的特徴が最も強い
・弓状の眉や、鼻などが扁平で顔が細長い
・高身長(平均男性161cm、女性151cm)であることがわかる*2
・四肢骨は長く、脚は発達しているが腕は細い。下半身が発達
2、西北九州型(長崎周辺)
ホリが深く、身長が低め。上半身が発達している。
・縄文型の特徴が残るタイプ
・ホリが深く鼻骨が高く隆起、顔が短い
・低身長(平均男性158cm、女性147cm)
・鼻部や顔の高さ、身長で特に縄文人的特長がみられる
・手足は短く、腕が著しく太いが下肢骨は太くない。上半身が発達
3、南九州型(鹿児島周辺)
ほぼ縄文人。かなり身長が低く、ホリが深い。手足が細い。
・縄文的特徴がかなり強い
・著しくホリが深くて短い
・著しい低身長(平均男性153cm、女性142cm)
・手足は著しく華奢(=縄文人の特徴の残る在来型であることが推測できる)
※離島の場合は低身長ではない(平均男性160cm)*3
★中国地方弥生人(山口周辺)
縄文人と弥生人の特徴をそれぞれ持ち合わせている。
・顔が長い
・高身長
・頬骨や鼻から西北九州的特長が出ている
・四肢はともに細く華奢
=中国地方は九州の分類が適用できず、先程の3タイプの分類は九州地方限定のものであると推測できる
まとめ
これが、九州の弥生人の違い。
この後古墳時代に移行するのですが、それくらいになると縄文→弥生のような急激な変化でなく、徐々に現在の日本人のかたちに変化していくのですよね。
九州に顔が短い人が多い(と感じる)のは、こんな理由がひとつあるのかなと思っています。ざっくり九州と書いたのは、まさか弥生時代から外から人が入って来ず、全く九州の1地方から移動していない家というか人などいるはずもないから。一家代々九州出身、くらいの家になるとわかりませんけどね。
もしこんなようなものが日本人の遺伝子に未だ残っていて、いろんな形で現れたりしているとしたら面白いなとふとそんなことを思って、このネタ絶対需要ないよな、と思いながらも書きました。
北部九州と、それ以外で全く違い、他にも、海側と内陸の違いとかもあります。
海側(漁民)の特徴を持っているのは西北九州人、すなわち広くて短い顔で、低身長・縄文人的特徴、上半身が発達している。
平野部(農耕民)の特徴を持っているのは北部九州人で、細長い顔・高身長、下半身が発達している。
そして面白いことに、海側と内陸の中間地点の遺跡には、この二つの特徴がごちゃまぜになった骨が出てくるらしいです。内陸と海側で身長に差があるのは男性だけとか。でも、中国地方の海側は身長が高いのですよね。ここから、たんぱく質の栄養状態が関わっているという説もあります。
さて、もし飲み会などで気に入った人がいて、話に詰まった折にでも「ねえ知ってる?弥生人ってさあ!」などと話しかけてみてください。結果は保証しませんけども。
ちなみに、文化人類学系の知識を取り入れた小説では、北森鴻の人類学ミステリシリーズが今大好き。
伝承や伝説などをなぞらえた事件に胸熱ですね。
参考文献
※書いたの自体5年以上前で、出展がかなり古いです。現在の情報や、史実と違うところがあったら申し訳ありません。ご指摘いただけたら修正します。