英下院、シリア領内のIS空爆を可決
- 2015年12月3日
英国による過激派勢力「イスラム国」(IS)空爆の範囲をイラクだけでなくシリアにも拡大するという政府案を、英下院は2日夜、397対223で可決した。
10時間におよぶ議論の後、野党・労働党からも議員66人が賛成に回り、キャメロン首相は予想以上の支持獲得に成功した。
首相は「この国の安全を守るための正しい判断だ」と評価したが、反対派は過ちだと批判している。
閣僚たちは、「できるだけ早く」空爆を開始すると説明。キプロスの英軍基地からすでに英軍機4機が出発している。目的地は公表されていない。
BBCのロビン・ブラント政治担当編集委員は、英軍機の目的地について国防省は確認していないが、シリアだったとしても「意外ではない」と話している。
さらに英軍の戦闘機4機が、キプロスにある英領アクロティリの基地で待機している。
ハモンド外相は、作戦行動について「同時中継解説はしない」と述べたが、早ければ3日にも空爆を開始すると示唆していた。
外相は下院の採決結果を評価し、「議員たちが今日とった行動によって(英国は)前より安全になった」と述べた。その上で、「軍事攻撃だけではシリアは助けられないし、我々をダーエシュ(アラビア語圏でISへの別称)から守ることもできない。しかし今回の多角的な対応は、効果を上げる」と強調した。
<英語ビデオ>労働党「影の内閣」のヒラリー・ベン「影の外相」は、「この悪に立ち向かう必要がある」とシリア空爆の必要性を訴え、与野党議員から拍手された
<英語ビデオ>与野党首脳が激しい議論を展開した
労働党のコービン党首は、攻撃参加の理由は「不十分だ」と空爆に反対を貫いたが、「影の内閣」閣僚も含めて党内の意見は割れた。採決にあたり党議拘束をしなかったため、「影の閣僚」を含め労働党議員の29%にあたる66人が政府案を支持した。
ヒラリー・ベン「影の外相」は、「イスラム国」による「この悪に立ち向かう」よう演説し、保守党議員を中心に多くの議員から拍手を浴びた。ベン氏は「イスラム国」が「われわれの民主主義を見下している」と厳しい口調で非難した。
<分析> ローラ・クンスバーグ政治編集長
デイビッド・キャメロンはかねてからの目的を達成した。
「イスラム国」を自称するシリアの過激派勢力に対する介入は、数カ月前には不可能と思われていた。しかしパリ連続襲撃を受けて、IS空爆の範囲をイラクからシリアにも拡大するのは、不本意ながらも不可避だろうという認識が出現したのだ。
英軍機は3日未明にかけて空爆を開始する可能性もある。
リビア、イラク、そしてシリアと、これは首相にとって3件目の大規模な海外介入になる。しかし本物の平和を実演するための包括的な計画をまとめるのは遙かに複雑な作業で、イギリスだけで完遂できるものではないと首相も認めている。