「いったん死んでよみがえることに近い」「古い大塚家具の終わりの始まり」。大塚家具の大塚久美子社長は12月20日まで延長を決めた「全館全品売りつくし」の狙いをこう表現する。今年3月、父・勝久氏と経営権をめぐるお家騒動に区切りを付け、新生・大塚家具として全16店でダイニングセットやソファーなど約34万点を最大50%引きで販売する。勝久氏が進めてきた高級品中心の品ぞろえから、20万円前後と比較的手の届きやすい中価格帯中心へと生まれ変わるのが狙いだ。
店づくりだけではない。株式市場でも「古い大塚家具の終わりの始まり」に対する期待感は高い。創業者で久美子社長の父、勝久氏が同社株式の売却を進めているからだ。関東財務局に提出された変更報告書によると、勝久氏は年末までに議決権ベースで5.12%に相当する95万株を売却、さらに3.7%分、68万6500株を来年3月までに追加で売却する。合計で議決権ベースの8%強、163万6500株を手放す。
ききょう企画が筆頭株主に
この結果、勝久氏の保有比率は10.05%と今年6月末時点の18.88%から減少する。代わって一族の資産管理会社で、発行済株式の10.21%を持つ「ききょう企画」が僅差で筆頭株主となる。
勝久氏が手放す株式は、どこへ向うのだろうか。売り手と買い手が無数に行き交う株式市場では、その行方を知るすべもない。しかし勝久氏の売り方と、久美子氏が率いる新生・大塚家具の財務戦略から、2つの注目点が見えてくる。
市場で小口売却に動く勝久氏
一つ目の注目点は、勝久氏の株式を買い集める形で新たな大株主が現れるかどうかだ。勝久氏の売り方からも、その可能性は否定できない。11月12日1万5400株、13日1万5300株、16日1万500株――。変更報告書によると、勝久氏は売却対象となる163万株をできるだけ小口に分けて売っている。売却のタイミングを分散することで、株価の下落を抑えるためだ。