米ヤフーのネット事業買収に数社が興味=関係筋

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米ヤフーの中核であるインターネット事業を買収する企業はディスプレイ広告販売の低迷などの問題も引き継ぐことになる Photo: Associated Press

 米ヤフーの中核であるインターネット事業の買収候補に、メディアや通信大手、未公開株(PE)投資会社などが挙がっている。事情を知る複数の関係者が明らかにした。

 関係筋によると、同事業の買収を検討する可能性があるのは、米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ、メディア王バリー・ディラー氏が率いる米インターネット複合企業のIAC/インタラクティブコープなどだ。

 さらに、ヤフーの資産を細切れにして売却する場合には、米ニューズ・コープや出版大手タイムなどが興味を示すかもしれないという。ニューズはウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などの出版メディアを傘下に持つ。日本のソフトバンク・グループを挙げるアナリストもいる。

 また、事情筋の一人はPE投資会社のTPGキャピタルがヤフーのメディア部門の買収を検討していることを明らかにした。

 ヤフーの広報担当者にコメントを求めたが現時点で返答がない。

 苦戦を強いられているヤフーではあるが、同社の持つ巨大なユーザー層は大きな魅力だ。同社の検索サイトなどへアクセスする延べ人数は米国だけで1カ月あたり2億人を超えている。PE会社が買収すれば、ヤフーの上場を廃止することによって、公開会社では困難な抜本的な事業再編ができる。例えばヤフーの設備投資を削減する一方で、その潤沢なキャッシュフローを利用する可能性もある。

 WSJが1日報じたように、ヤフーの取締役会は今週の会合で複数の大胆な経営戦略案を検討している。中核のネット事業の売却や、中国の電子商取引大手である 阿里巴巴集団(アリババグループ)の株式300億ドル(約3兆6900億円)超相当を別会社に移管(スピンオフ)する計画を進めるかどうかなどだ。

 ヤフーがネット事業を売却しないことを選択する可能性もある。ピボタル・リサーチ・グループのアナリスト、ブライアン・ビーザー氏は1日、顧客向けリポートで同事業の価値は手元現金を除いて19億ドル(約2340億円)と試算した。キャンター・フィッツジェラルドのアナリスト、ユセフ・スクォリ氏は以前、同じベースで39億ドルと試算していた。

 どちらの試算額も、ヤフーが現在投資家によって与えられている価値を上回っている。関連会社のアリババグループとヤフー・ジャパンの保有株の価値を計算に入れると、投資家はこの中核事業の価値をマイナスとみている計算となる。

 サントラストのアナリスト、ロバート・ペック氏はネット事業を買収することが理にかなう企業は多数あるという。ベライゾンやAT&Tコムキャストやウォルト・ディズニー、ニューズなどだ。

 ただ、ヤフーのネット事業を買うにはいくつかの厳しい問題を引き継ぐ覚悟が必要となる。同事業の伝統的強みであったパソコン上で大手広告主に広告スペースを売るという事業が低落傾向にあることだ。かつて企業はネット広告スペースとしてはヤフーを第一に考えたが、現在はフェイスブックやグーグルに取って代わられてしまった。調査会社によると、2015年の米国のデジタル広告市場の規模は581億2000万ドルで、ヤフーのシェアは4.4%と予想されている。昨年のシェアは5.1%だった。

 ベライゾンは、ヤフーを買収すれば、広告ビジネスを強化できる。同社は6月に44億ドルでインターネットサービス大手AOLを買収している。AOLはウェブサイト上の広告スペース販売の支援サービスに特化しているが、その事業にヤフーの膨大な顧客の登録データやメールアドレスが役立つ。AOLの顧客アクセスとベライゾンの無線通信事業のデータ、ヤフーのデータを組み合わせることにより、グーグルやフェイスブックの広告事業への強力なライバルとなれる可能性もある。

 ヤフーとAOLは以前、統合の可能性が取りざたされたことがある。またAOLの最高経営責任者(CEO)のティム・アームストロング氏はベライゾンに残っており、ヤフー・AOLを統率していく上では適任かもしれない。

 米ケーブルテレビ(CATV)最大手コムキャストもインターネット動画広告の支援サービスなどを手掛けるフリーホイール・メディアやテレビコマーシャル(CM)のターゲット広告を手掛けるビジブル・ワールドなどを買収して広告事業を拡大させている。またIACはコメディサイトのカレッジ・ユーモアや生活総合情報サイトアバウト・ドット・コムなどのウェブサイトを傘下に持っており、ヤフーの買収による恩恵が期待できる。また、日本のソフトバンク・グループも候補に挙がっている。

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