藤田知也
2015年12月3日03時53分
Airbnb(エアビーアンドビー)などの「民泊」仲介サイトを使い、マンションの空き部屋をホテルのように貸し出す人が都市部で急増している。無許可でお金を取りながら繰り返し人を泊める行為は、懲役や罰金の対象にもなる旅館業法違反。なぜ取り締まりがないの?
11月中旬、東京都心の繁華街に近いマンションの一室。管轄の保健所職員が不動産業者とともに戸をたたくと、白人男性がひょっこり顔を見せた。だが、相手は日本語が通じず、こちらは英語が話せない。旅館業法違反が疑われる一室だが、聞きとれたのは「アイムフレンド(私は友だちだ)」の一言。律義に家賃を振り込んでいる日本人の借り主に連絡をつけようにも、電話に出ないという。
旅行者に空き部屋を紹介するサイトのおかげで、急増する訪日客に対し、誰でも簡単に部屋を貸せるようになった。とくに都心部では、マンションの一室を借りたり買ったりして貸す投資目的の物件が目立つ。たとえば、家賃10万円の部屋を1泊1万円で貸せば、稼働率次第で家賃の2倍以上を稼げる。
Airbnbは「法律に従うよう利用者に求めている」と強調するが、実際には多くの物件が旅館業法に違反している可能性が高い。無料だったり一度でやめたりする場合などをのぞき、厳密には違反になるからだ。本来は、各自治体の保健所が、営業許可のない宿泊施設に人を泊めないよう指導し、悪質な場合には警察が捜査する。だが、サイト上では多くの物件が宿泊者を募っているのに、検挙される例は少ない。
利用者に人気の地域を担当する新宿保健所に話を聞くと、民泊に関する苦情や通報を受けて調べた事例は、昨年度の6件に対し、今年度は10月までに22件あった。多くは近隣住民からの「外国人の出入りが激しくて気味が悪い」という内容だった。
具体的な情報があると、保健所職員が現地に出向いて、宿泊者に会えれば話を聞いてみる。あとは所有者や借り主を割り出し、宿泊施設としての実態を聞き出すという地道な作業。のらりくらりの対応もあって、1件の違反事例を判断するのに相当の時間と手間がかかる。
指導にまで至れば、多くの人は違法な民泊営業をやめるという。だが、Airbnbで「新宿」の物件を探すと、今も1千件以上が表示される。保健所の担当者は「今は情報提供を受けたものだけ調べる。違反は見逃せないが、我々の能力にも限界がある」と話す。
残り:505文字/全文:1499文字
おすすめコンテンツ
PR比べてお得!