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 米軍基地問題をめぐり国から訴えられた沖縄県の翁長雄志知事が、法廷に立った。「国民の皆様すべてに問いかけたい」。沖縄の歴史と現状にどう向き合うかを訴えた言葉は、沖縄の内外にどう響くのか。

 「県民の思いを背に、沖縄の主張をして参ります」

 裁判所前の公園に数百人が集まった支援集会で翁長雄志知事はこう叫び、裁判所に足を踏み入れた。

 国、県それぞれ約20人の関係者や代理人弁護士が向かい合う法廷。午後2時に裁判が始まると、最初に翁長氏の陳述が許された。

 「歴史的にも現在も沖縄県民は自由、平等、人権、自己決定権をないがしろにされてきた。私はこれを『魂の飢餓感』と表現している」。翁長氏は表情を変えず、裁判官3人の顔を順に見つめ、時折手持ちの書類に目を落としながら語った。

 琉球王国が武力を背景に日本に併合されたことや70年前の地上戦、そこから始まった米軍施政下で県民の住まいが「銃剣とブルドーザー」で強制的に接収され、基地にされていった歴史をたどる。「今度は日本政府による海上での『銃剣とブルドーザー』で美しい海が埋め立てられようとしている。米軍基地だけは、米軍施政権下と何ら変わりない」

 ほぼ満席の傍聴者が静かに聴き入る中、翁長氏の言葉は、県外の国民にも向けられた。「米軍基地は今や沖縄経済発展の最大の阻害要因。沖縄は基地経済で成り立っているという話は過去のもので完全な誤解だ」

 10分余りの陳述が終わると、翁長氏は裁判官らに向かって一礼。自席に向かう翁長氏に向け、多見谷寿郎裁判長は「分かりやすい説明でした。ありがとうございます」と声をかけた。(木村司、吉田拓史)