私にとって、「数の本質」は「自然の本質」や「自然の真理」そのもので、なにか神秘的なものを感じるのですよ。
ガウスの言葉にある「数学は科学の女王であり、整数論は数学の女王である」というのを感じざる得ないのです。
今回も難問でした。
難問中難易度☆☆☆☆
【問題】
正の整数$ a,b $は10進法で表すといずれも$ 2n $桁となり、最上位の数字は0ではない。さらに、次の3つの条件が成り立つ。
(1)$ a $の上$ n $桁と$ b $の下$ n $桁とは等しく、$ a $の下$ n $桁と
$ b $の上$ n $桁とは等しい。
(2)$ a < b $である。
(3)$ b $は$ a $の倍数である。
このような$ a,b $をすべて求めよ。
例えば、$ a=1234,b=3412 $のとき、(1)、(2)は成り立つが、(3)は成り立たない。
【証明】
条件(1)より、$ n $桁の数$ x,y $を用いて
\begin{eqnarray}
\left\{ \begin{array}{l}
a = 10^{ n } x + y \\
b = 10^{ n } y + x \\
\end{array} \right.
\end{eqnarray}
条件(2)より$ x < y $
条件(3)より、ある2以上9以下の整数$ m $が存在して
$$ 10^{ n } y + x = m ( 10^{ n } x + y ) \ \ \cdots (A) $$
の、3つが成り立つ。
$ (A) $の両辺に$ 10^{ n } x + y $を足すと
$$ ( x+y )( 10^{ n }+1 ) = ( m+1 )( 10^{ n } x + y ) \ \ \cdots (B) $$
ここで、$ m+1 , 10^{ n } + 1 $が互いに素であると仮定すると、
$$ 10^{ n }x + y \equiv 0 \ \ \pmod{ 10^{ n } + 1 } $$
なので、
$$ x( 10^{ n } + 1) \equiv x - y \ \ \pmod{ 10^{ n } + 1 } $$
よって
$$ x \equiv y \ \ \pmod{ 10^{ n } + 1 } $$
これは、$ x,y $はどちらも$ n $桁なので$ x,y < 10^{ n } $で、$ x < y $であることに矛盾する。
よって、$ m+1 , 10^{ n } + 1 $は共通の素因数をもち、その素因数としてありうるのは2,3,5,7のいずれかである。
しかし、$ 10^{ n } + 1 $は2,3,5の倍数になりえないので、$ m+1 , 10^{ n } + 1 $の共通の素因数は7である。
これより、$ 2 < m < 9 $なので、$ m =6 $である。
ここで、$ \displaystyle k = \frac{ 10^{ n } + 1 }{ 7 } $とおくと$ (B) $より
$$ ( x + y ) \cdot 7k = 7 \cdot \{ ( 7k - 1 )x + y \} $$
より
$$ 5kx = ( k-1 )( y-x ) \ \ \cdots (C) $$
となる。
$ 7k = 10^{ n } + 1 \equiv 1 \pmod{ 5 }\ $より$\ k \equiv 3 \pmod{ 5 } \ $なので、5と$ k-1 $は互いに素である。
また、$ k $と$ k-1 $は互いに素なので、$ 5k $と$ k-1 $も互いに素であり、$ (C) $より$ y-x $は$ 5k $の倍数であることがわかる。
これと、$ 0 < y-x < 10^{ n } + 1 = 7k $より、$ y - x = 5k $となり、このとき$ (C) $より$ x = k-1 $、よって$ y = 6k-1 $となる。
これより
\begin{eqnarray*}
a &=& 10^{ n } x + y \\
&=& 10^{ n }( k-1 ) + ( 6k-1 ) \\
&=& 10^{ n } ( \frac{ 10^{ n } + 1 }{ 7 } - 1 ) + ( 6 \cdot \frac{ 10^{ n } + 1 }{ 7 } - 1 ) \\
&=& \frac{ 1 }{ 7 } ( 10^{ 2n } - 1 ) \\
b &=& ma = \frac{ 6 }{ 7 } ( 10^{ 2n } - 1 )
\end{eqnarray*}
ここで、$ 10^{ n } + 1 $が7の倍数であることより、7の倍数判定から
$$ n \equiv 3 \pmod{ 6 } $$
【7の倍数判定】
ある数を$ abcdefghijkl $として、一の位から3桁ずつ区切り$ abc,def,ghi,jkl $とする。
区切られたそれぞれの3桁の数を独立した数と考え、左から奇数番目にある数の和と偶数番目にある数の和の差、すなわち
$$ S = (abc + ghi ) - ( def + jkl ) $$
が7で割り切れれば、その数は7で割り切れる。
今回の場合、$ 100 \cdots 001 $において、$ S = 0,9,99,-2,-11,-101 $のいずれかであるが、このうち7で割り切れるのは$ S = (abc + ghi ) - ( def + jkl ) = 0 $。
これより、$ 10^{ n } + 1 $が1,001、1,000,000,001、1,000,000,000,000,000,001、すなわち$ n $が6で割って3余る数のときとなる。
逆に、$ n \equiv 3 \pmod{ 6 } $のとき、$ a = \frac{ 1 }{ 7 } ( 10^{ 2n } - 1 ) $と$ b = \frac{ 6 }{ 7 } ( 10^{ 2n } - 1 ) $は条件をみたす。
これより、求める解は
$$ ( a,b ) = ( \frac{ 1 }{ 7 } ( 10^{ 2n } - 1 ) , \frac{ 6 }{ 7 } ( 10^{ 2n } - 1 ) ) $$
かつ、$ n $は$ n \equiv 3 \pmod{ 6 } $を満たす正の整数である。
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