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 国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐり、長崎地裁は10日、潮受け堤防の排水門の開門差し止めを命じた仮処分決定に対する国の異議申し立てを却下した。国は、開門を命じた福岡高裁の確定判決と仮処分決定の相反する義務を負い、「開門する、しないのどちらの立場も取れない」としてきた。異議申し立てが却下されたことで、板挟みの状態が続くことになる。

 干拓事業をめぐっては、有明海沿岸の漁業者らが、湾の閉め切りによって海の環境が悪化し、魚や貝がとれなくなる被害が出たなどとして、開門を求めて提訴。2010年に福岡高裁が漁業被害を一部認め、3年以内に5年間開門するよう国に命じ、民主党の菅直人政権は上告せずに判決が確定した。

 一方、干拓地の営農者や周辺の漁業者らは、開門すると農地への塩害や海の汚れで農業や漁業に影響が出るとして、11年に開門差し止めを求める訴訟を長崎地裁に提起。差し止めを求める仮処分も申し立て、長崎地裁は13年に開門差し止めを命じる仮処分決定を出していた。

 開門差し止めを求める訴訟は今年10月に結審。地裁は国、開門反対派、補助参加人の開門派の3者に和解協議を呼びかけており、判決期日は決まっていない。差し止め訴訟と仮処分決定への異議申し立ては争点がほぼ同じで、3者はほぼ同じ内容を主張しており、同じ裁判官が審理している。(山野健太郎)