地中を流れる下水の熱を回収し、冷暖房や給湯に利用する研究が進んでいる。もともとは流れるまま捨てられていた「下水熱」は、全国的に活用すると1500万世帯分の冷暖房のエネルギーに相当するとして注目されだした。下水処理施設で導入されることが多かったが、最近は広く下水管から熱を回収する技術の開発が進んでいる。滋賀県では、大規模工場の蒸気ボイラーに給湯する共同研究も始まるなど、地産地消の新エネとして普及する動きが加速している。(藤谷茂樹)
千葉市美浜区の幕張新都心ハイテク・ビジネス地区、横浜市港北区の日産スタジアム、東京都港区のソニーシティ(ソニー本社)…。下水処理施設の近くにあるこれらの施設は、既に下水熱を利用した冷暖房システムが導入されている。
下水は、気温の影響を受けず、冬は温かく夏は冷たいのが特徴で、この未利用の熱に着目したのが下水熱利用の仕組みだ。空気や水中から熱をかき集めて大きな熱エネルギーに凝縮したり、逆に熱を拡散する技術「ヒートポンプ」を活用する。暖房や給湯は、熱を凝縮して温度を上げ、冷房はヒートポンプで熱を拡散させることで温度を下げる。
全国の下水を使った場合には、1500万世帯分の冷暖房のエネルギーになるとされる。これまでは捨てていたエネルギーを有効活用することから、省エネと温暖化ガス削減の一石二鳥の効果が期待される。
国土交通省も下水熱利用の普及を後押しする。平成24年に下水熱利用推進協議会を設け、官民の情報交換を活発化させるとともに、今年は導入に向けたマニュアルを整備した。同省下水道企画課は「下水熱は下水道が整備された都市にもとからあるエネルギー。さまざまな施設で活用できる」と説明する。
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