平成27年度富士総合火力演習では、夜間演習も行われました。照明弾や暗視スコープなどを使用して、真っ暗な中で射撃を行うもので、高い技能を求められます。
そんな夜間演習の模様を、新旧のカメラで撮影、その低照度環境での撮影能力を比較しました。
今回用意したのは、10年前のナイトショット機能搭載の家庭用ハンディカム「SONY HDR-HC1」最新式の業務用ビデオカメラ「SONY PXW-X160」、最新式デジタル一眼レフカメラ「Canon EOS 5Ds」、ISO409600までの超高感度撮影が可能なデジタル一眼カメラ「SONY α7S」、そして「iPhone 6」の5台です。
日が暮れてゆく中、夜間演習のリハーサル(練習)が行われており、それを見ながらカメラを調整したりして日没を待ちます。山の天気は変わりやすく、霧が濃くなったり、小雨模様になったりと、その都度心配になります。
夕方でも日没間際の時間帯は、照明弾が点火すると光球が美しいです。また、昼間の演習では「非常に難易度の高い砲撃技術」とアナウンスされた洩火射撃(砲弾を放物線を描くように時間差で打ち上げ、空中で同時に炸裂させる技術)「富士山(炸裂する火球が富士山のシルエットと重なるように描かれる)」が練習で何度も見ることができるなど、 かなり楽しめました。
そして、完全に日が暮れて照明を消すと真っ暗闇になってしまう状況で、演習が開始されました。演習中は、暗視スコープなどを使用する際に邪魔にならないよう、プレスを含め明かりが漏れないよう液晶モニターを消したり、LEDが点灯しないようカバーするなどを徹底されました。そんな真っ暗闇の中で行われた実際の演習の模様は動画でご覧ください。
ダイジェストでは、適宜状況の解説をテロップにて行っております。
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撮影している最中はどこまで写っているのか楽しみでしたが、動画をチェックしてみて意外なことが判明しました。すでにご覧頂いた通り、「HDR-HC1」によるナイトショットの映像は思いのほか撮れておりませんでした。
もちろん、内蔵の赤外線照明が届かないエリアでの撮影ではあったのですが、IR照明弾(赤外線照明弾)の場合でも、照明弾の光球が他のカメラより明瞭に写ったくらいで、状況が判別できるレベルではありませんでした。こちらは家庭用ということもあり、赤外線撮影にも制限がかかっているので、仕方なかったのかもしれません。
対照的に、きわめて明瞭に写ったのはSONY α7Sでした。今回は、EFレンズアダプターを付けて、24mm f1.4の単焦点レンズを使用しましたが、肉眼でも確認できない星まで写っておりました。しかし、明るすぎるゆえに、照明弾などの光が発生した場合には白飛びしてしまい、状況がわからない事態になってしまいました。暗い環境でも明るく撮れる反面、わずかな灯りでも明るく捉えてしまうので、明暗が移り変わる環境での撮影は難しいのかもしれません。
TV局などでも取材などに使用する業務用カメラは、固定ではなくカメラマンをお願いして撮影してもらいました。α7Sのような暗闇が昼間のように明るくなるという事は無いですが、戦車のLEDマーカーの光や曳光弾(弾丸の軌跡がわかるように光を発しながら発射される弾丸)の軌跡などが綺麗に写っておりました。
最近よく見られるデジタル一眼動画としては、新製品のキヤノン 5DsにEF24mm f1.4の単焦点レンズを使用して撮影を試みました。業務用ビデオカメラ「SONY PXW-X160」に近い映像感になりましたが、照明弾などの明るすぎる光源では白飛びしがちでした。
そして、意外と撮れていたのはiPhone 6でした。マンフロットのKLYP+にワイドレンズを使用いたので、若干周辺収差はあるものの夜間なので目立たず、良い感じに撮れておりました。ただし、iPhoneの画面の光が漏れないよう、カバーをしながら撮影しなければならなかったので、録画開始や最初のピント合わせなどがやや苦労しました。
自衛隊の演習や行事などは、最近の関心の高まりとともに人気も高く、倍率も非常に高くなっているという事ですが、運良く当選した場合には、特殊な環境で機材の限界にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
取材協力:AT Linkage株式会社