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【産経抄】
「南京大虐殺文書」を記憶遺産に申請 その「歴史戦」最大の功労者とは… 10月12日
うかつにも、なくなっていると思い込んでいた。中国の大学教授らが選考する「孔子平和賞」である。2010年、中国の民主活動家、劉暁波氏が受賞したノーベル平和賞に対抗して、急遽(きゅうきょ)設立されたものだ。
▼1回目の受賞者は、台湾の連戦元副総統だった。あまりの唐突さに、連戦氏は授賞式の出席を拒否する。国際社会の失笑を買い、中国当局は翌年、賞の中止を発表するが、復活していた。すでに6回目を数え、今年はアフリカ南部ジンバブエのムガベ大統領(91)が受賞した。
▼ムガベ氏といえば、1980年の独立時には、ゲリラ闘争を指揮した英雄だった。もっとも、7年後に大統領に就任してからは、自国通貨が紙くずになるハイパーインフレを引き起こすなど失政が続く。野党勢力は武力で弾圧してきた。
▼かつて米国の外交誌に掲載された「最悪の独裁者」のランキングでは、北朝鮮の金正日総書記に続いて、2位に入っている。中国はそんなムガベ氏を支え、ジンバブエの保護領化を進めてきた。要するに受賞者は、中国にとってもっとも都合のいい人物といえる。