来春の北海道新幹線開業と同時に、JR北海道から分離される並行在来線の江差線(五稜郭―木古内間37・8キロ)は、第三セクター会社、道南いさりび鉄道(函館)が経営を引き継ぐ。
開業まで半年を切り、いさりび鉄道は準備を急いでいる。だが、沿線人口の減少などで、経営計画では当初から赤字が見込まれる。
厳しい環境下でのスタートとなるが、地域住民の生活路線を守っていかねばならない。
新幹線効果を取り込むことはもちろん、域外から利用客を呼び込めるかが重要になる。会社や沿線自治体は知恵を絞ってほしい。
まず大事になるのは、沿線住民の積極的な利用だ。
経営計画の推計では、開業時に632人の輸送密度(1日1キロ当たりの乗客数)は、10年後に487人に減るとしている。
会社は全列車が乗り入れるJR函館駅までの利用に対する割引制度などを検討中だ。できる限り現行運賃との差を縮めてほしい。それにはJR側の協力が不可欠だ。
乗客が使いやすい運行ダイヤを組む必要もある。
運行区間では貨物列車の脱線事故などが相次いだ。安全対策にも万全を期さねばならない。
それでも経営は厳しい。道や沿線自治体の財政支援はあるが、北海道と本州を結ぶ寝台列車の廃止で、鉄道の利用料が見込めなくなったのも痛手だ。
収入減を抑えるには、域外からの集客がカギを握る。
休日には観光列車を走らせる計画という。函館山が望めるなど、車窓からの風景は美しい。さらに工夫があれば魅力は増す。情報発信にも力を入れる必要がある。
石川県の能登半島を走る「のと鉄道」(33・1キロ)は、沿線人口の減少などで営業赤字が続き、対策として今春の北陸新幹線開業に合わせ観光列車の運行を始めた。
地元出身のパティシエがつくるスイーツなどを堪能しながら、景色を楽しむプランが好評という。
いさりび鉄道の沿線も食材は豊富だ。先行地域の取り組みを参考にしたい。