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(Newsmart)2015年10月4日(日)
鬼怒川決壊 常総 「ロケの街」消沈 被災支援 手いっぱい
ホテルや弁当…痛手
- 常総市内でのロケの本数を示すボード。「1234本まであと16本」の数字は水害後、ストップしたまま=同市役所
「ロケの街」として知られる常総市が、鬼怒川決壊による大規模水害への対応に追われ、映画やドラマなどのロケ隊の受け入れが当面困難な状況に陥っている。ロケ対応窓口の市側が被災者支援で手いっぱいになっているためだ。撮影スポットが避難所になっているケースもあり、本年度の撮影数落ち込みは避けられそうにない。ホテルや地元の弁当業者は困惑を隠さない。
同市は県内有数のロケ実績を誇り、誘致などの業務は市商工観光課内の常総フィルムコミッション(FC)推進室が担う。同室の発足は旧水海道市時代の2003年6月。迅速で丁寧な対応で撮影会社の信頼を得てきた。
同課によると、市内での年間撮影数は14年度が87件だったものの、例年100〜120件台で推移し、これまでに計1218件の撮影が行われた。
だが、今回の水害で、同室の職員3人全員が救援物資の受け入れ業務に専念。同課全体でも、被災した中小企業の対応に走り回っており、ロケに関する問い合わせがあっても断っているのが現状だ。
このため、市内での撮影は9月5日以降、実施されておらず、本年度の撮影数は47件で止まったまま。撮影スポットの中には、時代劇などで利用されている「水海道あすなろの里」のように避難所になっている場所も含まれている。同施設では今も約170人が避難生活を送っている。
同課の土井義行課長は「東日本大震災の時は約1カ月間、ロケができなかったが、今回はそれ以上に長引く。今は市民の生活基盤の立て直しが最優先。ロケの再開は早くても年末」と話し、本年度の撮影数の落ち込みも懸念する。
ロケ実施は、スタッフの仕出し弁当費や宿泊費などで、地元に年間3千万〜4千万円の経済効果をもたらしており、この面でも土井課長は「痛手だ」と指摘する。
弁当の注文を受けている同市水海道栄町の「木村屋」の木村昌之さん(58)は「また撮影を通じて常総を助けてほしい」と話す。同市水海道宝町にある水海道第一ホテルの熊谷昇支配人(61)は「これまで多くの俳優さん、スタッフさんが宿泊してくれた。再び街に活気を運んでくれることを願いたい」とロケの再開に期待を寄せている。
(今橋憲正)最近の記事