夏の風物詩だった心霊写真。
自分が子供の頃、夏といえばテレビのオカルト番組を見るのが楽しみだった。
例えば、夏休みのお昼にやっていた「あなたの知らない世界」だとか、特番の心霊写真特集などだ。怖がりのくせにそういうのを見るのは好きで、寝る前にその事を思い出してしまって眠れなくなったりしていた。
しかし、いつの頃からか、そういう特集をテレビでやる機会は随分と少なくなったように思う。特に、心霊写真特集はかなり見かけなくなった。なぜ、最近はやらなくなったのだろうか。
それは、やはりカメラの進化が影響していると思う。
心霊写真と呼ばれるものは、幾つかのパターンに分類されるが、それらの殆どがフィルムカメラだった時代のカメラの性能が関係していたのだ。だが、カメラの進化した現代でもシチュエーションによっては心霊写真っぽいものが撮れる時がある。
というわけで、今回はいわゆる「心霊写真」のパターン分類とその撮り方、そして現代の傾向を語ってみたいと思う。
ロールシャッハタイプ。
人間の脳は優秀で、目で見た情報に欠損があったとしても、それを補って補正して見せてくれる。それが裏目に出た形なのが、ロールシャッハタイプの心霊写真だ。
例えば、上記の写真はウチのアパートのドアの木目なのだが、よーく見るといくつも顔のような模様を見出すことが出来るのがおわかりいただけただろうか。とりあえず心霊写真本っぽく該当の場所を◯で囲ってみた。こうするとより雰囲気が出る。
だいたいの場合、二つの「目に当たる点」と、「口に当たる部分(点でも線でも良い)」を見つけると、人間の脳はそれが顔だと認識するようになっている。そう、最近のデジカメの顔認識機能のようなものが、脳には備わっているのだ。
木目ではなく、岩や川面、壁のシミなどでも同様の効果が得られる場合がある。手元にもし心霊写真集がある人(いるのかw)は、パラパラと見てもらえばそういう写真が沢山あることに気がつくだろう。
フラッシュの影響によるもの。
下の写真を見て欲しい。これは、自分が沖縄の美ら海水族館に行った時に撮った写真だが、写真の真ん中にまるで骸骨の手のようなものが写っていることをおわかりいただけただろうか。
※該当部分を拡大。
一見、恐ろしい写真に見えるこれは、水族館の暗い場所でフラッシュを焚いて撮影したことに起因する。この水槽には、実はサンゴが沢山展示されていて、フラッシュの光にサンゴが反射して、あたかも骸骨の手のように見えただけなのだ。
フラッシュの影響による心霊写真はまだある。心霊写真では定番の体の一部が透けて見えるというものだ。
上記の写真を見て欲しい。指先が透けて向こうの壁の模様が見えていることがおわかりいただけただろうか。
カメラのレリーズタイムラグが優秀すぎてそれっぽい写真が撮れなかったが、暗い場所でフラッシュを焚いて写真を撮る場合、カメラはシャッタースピードを遅くする。その時に被写体が動いてしまうと、あたかも被写体が透けているかのような写真が撮れるのだ。
今回は一人での実験のため、効果的な写真が撮れなかったが、シチュエーションによってははっきり写っている被写体が透けている写真を撮ることも出来る。暇な人はやってみて欲しい。
暗い場所でフラッシュを焚いて、出来れば背景が白かったりするところで撮ると効果的である。
ブレ写真。
上記の写真は、カメラの前で手をブンブン振って撮った写真である。これはひと目でブレ写真だとわかるので、これを心霊写真だと言いはる人はなかなか強情な人だといえるだろう。では、次の写真はどうだろうか。
※該当部分を拡大。
上記の写真は、台湾の九份を訪れた時に撮った写真だが、写真下部のおじさんの頭部がおかしくなっているのがおわかりいただけただろうか。これは、おじさんが撮影している自分の目の前で動いていたため、こんな気味の悪い写真になってしまったのだ。
こういう気味の悪い写真も、人混みでやや暗い時に写真を撮るとわりと簡単に撮れる。都会に住んでいる人は、いつでもこういう写真を量産することができるので、是非やってみて欲しい。
体の一部が消えているタイプ。
まずは下の写真を見ていただきたい。
2匹のモノクロブーブーに挟まれたウッディの下半身が消えているのがおわかりいただけただろうか。実は、この状況を上から撮影すると、下記の写真のようになっている。
そう、ウッディは単に大きく足を拡げて写真に写っていただけなのだ。だが、アングルによっては下半身がまるっきり消えてしまったかのように写る。
今回は、ちょっと人間で協力してくれる人がいなかったため、かなり強引な写真になってしまったが、人間のモデルに協力してもらえればもっと自然な心霊写真が撮れるはずだ。出来れば、段差のあるところで撮影すると楽に取ることが出来るだろう。是非、やってみて欲しい。
写り込みタイプ。
どんなにデジカメが進化しても、映り込みを防ぐことは出来ない。例えば、カメラについているストラップがレンズにかかっている時に、フラッシュを焚いて撮影してしまうと、下記のような写真になる。
写真の左上に、まるで光の帯の様な赤いなにかが写り込んでいるのがおわかりいただけただろうか。
壁がすぐ近くにあるので、ストラップの影が壁に写ってしまっているのが減点ポイントだが、いかにも心霊写真っぽい綺麗な光の帯が撮れた。もっと綺麗に仕上げるには、近くに壁のない状況で撮影すると、かなりいい感じの写真が撮れるだろうと思う。
オーブ。
実は、現代の心霊写真業界で、今一番アツいのがこの「オーブ」だ。日本語でいうところの「たまゆら」である。
以下のスクリーンショットは、Googleで「オーブ 写真」で画像検索した時の結果だが、このように沢山の写真が出てくる。
これは、基本的に埃っぽい所や雨、雪が降っている時にフラッシュを焚いて撮影すると簡単に撮ることが出来る。背景にピントがあった状態でフラッシュを炊くと、ホコリや雨などに光が反射して光点のように見えるのだ。光点はピンぼけになるので、まるで光の玉のような綺麗な写真を撮ることができる。
だが、スピリチュアル系のサイトに言わせると、下記のような説明になってしまう。
※なんか誤字があるけど原文ママ。
オーブというのもをご存じでしょうか? オーブは写真に写る光る玉のようなもので、一説によると、「霊の魂」「守護霊」「精霊」が形を変えて写真に映り込んでいるといわれています。
ご丁寧にも、「フラッシュを焚いて何枚も撮影するのがコツ」などと上記サイトには書いてあるが、この記事を書いている人は本当にオーブの存在を信じて書いているのかどうか、甚だ疑問である。
ちなみに、サンプル写真は無い。自分はハウスダストが苦手なので、故意にホコリを立てることはしたくなかったためだ。だが、ちょっとホコリっぽい場所でフラッシュを焚いて撮影すれば、簡単にオーブの写真は取れる。興味がある人は是非やってみて欲しい。
二重露光。
現代ではほぼ絶滅してしまったタイプの心霊写真が、二重露光による写真だ。例えば、家族団らんの場面に大きな半透明の顔がどーんと写っているなんていうのがそれだ。
昔のカメラは1枚写真を撮る度にフィルムを手で巻かなければならなかった。それを忘れたり、規定の枚数以上の写真を誤って撮ってしまうと、そういう心霊写真を撮ることが出来る。
だが、現代のデジカメでは正直言ってこれを再現するのは合成以外では不可能だ。どうしても撮りたい人は、写ルンですなどのレンズ付きフィルムで試して欲しい。
FUJIFILM レンズ付フイルム フジカラー 写ルンです 1600 Hi-Speed (高感度・高速シャッター) 39枚撮り LF 1600HS-N FL 39SH 1
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カメラの進化とともになくなりつつある心霊写真。
というわけで、典型的な心霊写真のタイプと、何故こういう写真が撮れてしまうのかを記してきたが、おわかりいただけただろうか。
現代のカメラの進化は凄まじく、人間のミスをどんどん無くしてくれている。光学手ブレ補正や、フラッシュ撮影時における補助照明、そしてどんどん賢くなるオート撮影モードなどだ。
マニュアル撮影だった時代や、オートマチックカメラでもフィルムだった時代は、そこに人間のミスが入り込む隙があり、心霊写真と呼ばれる奇妙な写真が自然に撮れた。だが、テクノロジーの進歩がそういう物を駆逐してしまったと言えるだろう。
オカルトマニアとしては少々寂しい気もするし、そもそもそういう物を商売にしていた人は困っているとは思うが、これも時代の流れなんだろうなと思う。
それでも、本エントリに記した方法で心霊写真っぽい写真を撮影することは簡単に出来るので、もの凄く暇な人は試してみてはいかがだろうか。
いないか、そんな人w