聞き手・後藤遼太 西本秀
2015年9月19日04時59分
初めて街頭でマイクを握ったママがいた。高校生は制服姿でデモに加わった。安全保障関連法案をめぐり、多くの市民が声をあげた「2015年安保」の4カ月。人々は、政治のあり方を問い続けた。
18日夕、国会前の抗議の人波のなかに上智大1年の中川えりなさん(19)がいた。学生団体「SEALDs(シールズ)」のデモに参加し始めたのは6月。毎日、複数の新聞を読むようになり、初めて国会の傍聴もした。
選挙権はない。「日本の若者は政治に関心がないと言われ続けてきたけど、デモという形で政治参加ができる」。この日、国会前からSNSに投稿した。これからも、「みんなでやろうよ」と呼びかけたい。
市民に反対の声が高まった転機は、5月の閣議決定から3週間後、6月4日の衆院憲法審査会だった。「私は憲法違反であると考えています」。憲法学者がそろって安保法案の違憲性を指摘した。その一人、小林節・慶応大名誉教授はいま、「政府が狼狽(ろうばい)したことで、国民がなんとなく怪しいと思っていたことが、やっぱり怪しいと、火が付いた」と振り返る。小林氏はその6月、街頭で初めてマイクをにぎり、法案を批判し、この日も兵庫や静岡で講演に出かけた。「学者として教壇でかっこつけてしゃべってたけど、街頭に出て吹っ切れた。一有権者として政治に参加している。心のなかでチャンネルが変わった」
4カ月の間、安倍首相の「早く質問しろよ」というヤジや、自民議員の「マスコミを懲らしめる」発言も批判された。「民主主義ってなんだ」などと訴える抗議の規模は膨らみ、8月30日の国会前には12万人(主催者発表)が集まった。実行委の高田健さん(70)は55年前の「60年安保」と比べて「幅が違う」と語る。「おじいちゃん、おばあちゃん、若者も子供もいる。目的の幅も広がった。安保法案そのものへの抗議だけじゃない。政治に対する不信感から、街頭に出ている」
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