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写真部のカメラマンが撮影した数々のカットから、お薦めのもう1枚を紹介します
【政治】「立憲主義」を軽視 9条従来解釈と矛盾安全保障法制には、二つの「違憲」問題が残る。一つは多くの憲法学者らが指摘し続けた、戦争放棄を定めた9条に反するという問題だ。(生島章弘) 九条は国際紛争を解決する手段として、武力行使を永久に放棄すると定める。「専守防衛」という防衛政策の基本原則は国民に定着している。しかし、安倍晋三首相は昨年七月、憲法を一言一句変えることなく、攻撃を受けていない日本が武力で他国を守る集団的自衛権の行使を、閣議決定だけで容認した。 首相は安保法制を合憲と説明する際、「憲法の番人」の権威を都合よく利用した。半世紀以上前、米軍駐留の是非が争われた砂川事件の最高裁判決で「自衛の措置は国家固有の権能」と言及されていたことを持ち出し、安全保障環境が厳しくなった現代では、他国防衛さえ「自衛にあたる」という理屈を生み出した。 だが、どう取り繕ったところで、日本が攻撃された場合の反撃しか認めてこなかった従来の政府見解との矛盾は隠せない。これほど圧倒的多数の憲法学者や歴代の内閣法制局長官、最高裁判事経験者が口をそろえて「違憲」と指摘した法制は過去にないだろう。各種世論調査の結果も、首相の説明に説得力がないことを物語っている。 もう一つの違憲問題は、「立憲主義」がゆがめられたことだ。九九条は閣僚や公務員らに憲法の「尊重・擁護義務」を定める。憲法によって国家権力の暴走を縛るという立憲主義に基づけば、時の政権が望む政策を進めるため、憲法解釈を変えることは許されない。 九条問題と同様、多くの専門家が立憲主義に反すると指摘したが、首相は最後まで省みなかった。安保法制を「違憲」と指摘した元最高裁判事を、首相は国会で「今や一私人」と呼んだ。立憲主義を軽視する姿勢を象徴している。 最後は数の力で強引に審議を進めたが、安保法制の正当性に対する疑念は、今も全く晴れていない。 ◆憲法学者90%「違憲」本紙は安保法制に関し、全国の大学で憲法を教える教授ら三百二十八人を対象にアンケートを実施(六月十九日に郵送)。回答した二百四人(回答率62%)のうち、安保法制を「違憲」としたのは百八十四人。回答者の90%に上り、憲法学者の大半が安保法制を違憲と考えていることが明らかになった。 「合憲」との回答は七人(3%)。「合憲・違憲を議論できない」などとして「その他」と回答した人は十三人(6%)だった。 ◆秘密法公開の壁に安全保障法制の国会審議を通じて、自衛隊が海外で武力行使する根拠が、国民に非公開になる懸念が一層強まった。 安保法制に盛り込まれた集団的自衛権の行使に関する情報を公開すると、対米関係などに悪影響があると判断すれば、政府は特定秘密に指定し、国民の目から隠すことができる。政府は安保法制と特定秘密保護法を一体的に運用していく方針だ。 中谷元・防衛相は七月一日の衆院特別委員会で「(集団的自衛権の行使が必要と)認定する前提となった事実に特定秘密が含まれる場合もある。情報源や具体的な数値そのものは明示しない」と述べた。 七月二十九日の参院特別委でも、行使が必要と判断した情報に特定秘密が含まれる場合があると答弁した中谷氏に対し、共産党の小池晃氏は「特定秘密になっている部分が肝心。それを出さないでどうやって国民は判断できるのか」と批判した。 特定秘密保護法は「適用の要件があいまい」だと批判されている。防衛、外交などの四分野で、情報の「漏えいが国の安全保障に著しい支障を与える恐れがある」と判断すれば、政府は特定秘密に指定できる。 政府が都合よく特定秘密を指定しないよう監視する機関の一つが、衆参両院に設置された情報監視審査会だ。しかし、政府が審査会に示すのは、指定の日付や秘密の概要が分かる「特定秘密指定管理簿」などにとどまる。特定秘密の内容は全く分からず、審査は難しい。多数を占める与党議員が、政府の問題点を指摘するとは考えづらい。 集団的自衛権を行使するか決めるのは国家安全保障会議(日本版NSC)だ。これまで開かれたNSCの四大臣会合の「結論」は、原則すべて特定秘密を含んでいるとして非公開。集団的自衛権に関する情報はさらに機密性が高まるため、公開の可能性はほとんどない。 (城島建治) PR情報
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