Updated: Tokyo  2015/09/15 22:42  |  New York  2015/09/15 09:42  |  London  2015/09/15 14:42
 

日銀:現状維持も、情勢判断は下方修正-輸出・生産は横ばい圏内 (1)

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    (ブルームバーグ):日本銀行は15日の金融政策決定会合で、政策方針の現状維持を8対1の賛成多数で決めた。景気の情勢判断について、「緩やかな回復を続けている」との見方は維持したものの、「輸出・生産面に新興国経済の減速の影響が見られる」との一文を新たに加え、前月から下方修正した。

輸出や鉱工業生産は「このところ横ばい圏内の動きとなっている」として、前月までの「持ち直している」から下方修正した。海外経済についても「新興国が減速しているが、先進国を中心とした緩やかな成長が続いている」として、前月までの「一部になお緩慢さを残しつつも、先進国を中心に回復している」から下方修正した。

金融政策運営方針については、マネタリーベースが年約80兆円に相当するペースで増えるよう金融市場調節を行う方針を据え置いた。長期国債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)の買い入れ方針も維持した。木内登英審議委員が前回会合に続き反対した。

ブルームバーグが7日から10日にかけてエコノミスト35人を対象にした調査では、2人が追加緩和を予想していた。中国をはじめ世界経済の減速懸念で景気の先行き不透明感が強まっているが、エネルギーを除く物価が堅調に推移していることもあり、日銀は当面、内外の経済・金融情勢を見極める構えだ。

追加緩和は必至

今会合で追加緩和を予想した1人であるみずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストは結果発表前、「市場の先行きのマインドの低下が懸念され、2016年度の企業の投資計画や賃上げスタンスに影響があり得ることから、日銀は早期の対策を行う」と指摘。「仮に日銀が今会合で動かなくても、近い将来、動かざるを得ないだろう」としていた。

黒田東彦総裁は13年4月、2年程度を念頭に2%の物価目標を実現するとして量的・質的金融緩和を導入。昨年10月には追加緩和に踏み切った。原油価格の下落により達成時期は既に16年度前半に先送りを余儀なくされているが、中国に端を発した世界的な金融市場の混乱や原油価格の下落、さえない個人消費など、就任以来最大の試練に直面している。

エネルギー除くコアCPI重視に転換

ブルームバーグ調査によると、10月までの緩和予想は13人(37.1%)と前回調査(32.4%)から増加した。 「追加緩和なし」予想は13人(37.1%)と前回(43.2%)から減少。物価2%達成が一段と困難になる中、追加緩和期待がじわりと強まりつつある。

関係者への取材によると、日銀は10月30日に公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、15、16年度の生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)の見通しを下方修正し、「16年度前半ごろ」としていた2%達成時期を後ずれさせる可能性が高まっている。

同時に、複数の関係者によると、日銀は物価の基調を判断する上で、伸びを高めているエネルギーを除くコアCPI(新型コア)を重視する姿勢に転換しており、これが順調に上昇を続ける限り追加緩和は必要ないという。一方で、景気回復の動きに急ブレーキがかかれば同指数にも影響が及ぶため、今後1、2カ月の実体経済指標を注視し、必要があれば追加策を検討する。

「7-9月プラス成長」と明言したが

日銀は7月の金融経済月報で、独自にエネルギーを除くコアCPIの公表を開始した。複数の関係者によると、新型コアは5月、6月と0.7%上昇の後、8月は0.9%上昇と、依然として0%にとどまっているコアCPIとは対照的に着実に上昇している。

もっとも、物価の基調を左右する実体経済はさえない。7月の鉱工業生産は前月比0.6%低下、7-9月の予測も前期比0.6%上昇にとどまった。4-6月の実質国内総生産(GDP)2次速報は前期比年率1.2%減に上方修正されたが、在庫が押し上げ要因になっており先行きに不安を残した。7-9月も2期連続の減産、マイナス成長となれば、消費増税の影響で景気が失速した昨年7-9月以来となる。

黒田総裁は10日の参院財政金融委員会で「7-9月のGDPはプラスになる可能性が高い」と述べた。しかし、昨年7月15日の会見でコアCPI前年比(除く増税の影響)が「1%台を割るような可能性はない」と明言したにもかかわらず、秋以降1%割れとなり、10月会合で追加緩和に踏み切った経緯がある。

10月30日は追加緩和の「いい機会」

自民党の山本幸三衆院議員は10日、ブルームバーグのインタビューで、16年度前半ごろの2%の物価目標達成は「至上命題」であり、日銀は「必要な措置を考えるべきだ」と言明。10月30日の会合は追加緩和を行う「いい機会だ」と語った。

クレディ・アグリコル証券の尾形和彦チーフエコノミストは結果発表前、「メーンシナリオは『来年1月の追加緩和』で今のところ変更はないが、そのタイミングが年内に前倒しされる可能性が高まってきた」と指摘。

その場合は「『10月30日』の会合となる可能性が濃厚」とした上で、金融市場の状況次第では、「サプライズ演出の意味も含めて、『10月6、7日』や『11月18、19日』、あるいは『12月17、18日』などの決定会合で『追加緩和』となる可能性も完全には排除されない。今後の日銀決定会合からは一瞬たりとも目を離せない」としている。

木内氏が独自提案も否決

木内氏は前会合と同様、「マネタリーベース及び長期国債保有残高が年間約45兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節及び資産買い入れを行う」などの議案を提出したが、反対多数で否決。「資産買い入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点まで継続する」との議案も提出したが、1対8で否決された。

黒田総裁は午後3時半に定例記者会見を行う。議事要旨は10月13日に公表される。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイトで公表している。

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記事に関する記者への問い合わせ先:東京 日高正裕 mhidaka@bloomberg.net;東京 藤岡徹 tfujioka1@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net 淡路毅, 上野英治郎

更新日時: 2015/09/15 13:01 JST

 
 
 
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