寿岳文章さん一家の功績知って 京都・向日市民らグループ結成
英文学者の故寿岳文章氏(1900~92年)一家の功績を研究するグループを、京都府向日市民が中心となって結成した。同市上植野町の邸宅「向日庵(こうじつあん)」の保存や文化財指定を目指すといい、30日には第1回の研究会を開く。メンバーは「寿岳さん一家は向日市の宝。一人でも多くの人に業績を知ってもらいたい」と意気込んでいる。
寿岳文章氏は、ダンテの「神曲」を翻訳し、民芸運動や和紙研究の先駆者としても知られる。妻の故しづ氏も翻訳家として著名で、長女の故章子氏は国語学者として多くの著書を残した。
向日庵は阪急西向日駅にほど近い住宅街にある。木造2階建ての約130平方メートルで、約80年前に建設された。設計は大山崎町にあるエコ住宅「聴竹居」で知られる建築家の藤井厚二に師事した澤島英太郎が担い、換気・通気の徹底や造り付け家具などに特徴がある。文章氏と交流があった河井寛次郎やバーナード・リーチら多くの文化人が集う場でもあった。
2005年に章子氏が亡くなって以降は空き家になっており、寿岳氏一家と親交のあった近隣住民らが中心になって建物の保存を訴え、「壽岳文章一家の文化的業績についての調査研究会」を立ち上げた。今後、一般向けの研究会を定期的に開くほか、文化財指定を目指して関係機関に働きかける。
同会代表で京都市立芸大名誉教授の中村隆一さん(85)=向日市上植野町=は「貴重な文化遺産を守り、まちづくりに生かしていきたい」と話している。
第1回研究会は30日午後2時から同市寺戸町の市民会館で、京都市文化財保護課保護技師の石川祐一氏が「近代住宅史から見た壽岳文章邸」と題して講演する。無料。問い合わせは中村さん携帯電話090(7555)8497。
■寿岳 文章(じゅがく・ぶんしょう) 1927(昭和2)年に京都大文学部英文学科を卒業後、龍谷大講師や甲南大教授を歴任。和紙研究家としては、しづ氏とともに全国の和紙産地を調査したり、自邸で作った「向日庵本」を出版したりした。家事も率先してこなしたといい、一家と親交のあった安野洋子さん(87)は「かっぽう着姿をよく見掛けた。仕事も家事も一生懸命だった」と振り返る。
【 2015年08月22日 17時30分 】