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どうする公共施設のヘイトスピーチ7月24日 20時45分
全国的に問題になっているヘイトスピーチと呼ばれる民族差別的な言動。路上だけでなく公民館などの公共施設で行われることもありますが、そうした施設の利用について、管理する自治体は、どんな対応を取ればよいのか。
利用を認めれば差別の助長につながりかねませんが、断れば表現の自由を侵害するおそれがあるこの問題。法律や憲法の専門家が話し合うシンポジウムでも、対応の難しさが浮き彫りになりました。
利用を認めれば差別の助長につながりかねませんが、断れば表現の自由を侵害するおそれがあるこの問題。法律や憲法の専門家が話し合うシンポジウムでも、対応の難しさが浮き彫りになりました。
弁護士会がシンポジウム
民族的な差別言動を繰り返すヘイトスピーチ。国連の人種差別撤廃委員会が去年8月、日本政府に対して法律の整備を進めて規制するよう勧告、全国の地方議会で禁止や法整備などを求める意見書が相次いで採択されています。一方で、刑事罰を含む規制については表現の自由との関係などから慎重な意見もあり、公共施設が使われる場合にどう対応すればいいのか分からないといった声が管理する自治体から上がっています。
公共施設でのヘイトスピーチの規制にはどんな課題があるのか、東京弁護士会が、23日夜、シンポジウムを開き、憲法学者やジャーナリストなど4人のパネリストを中心に議論が行われました。
対応に戸惑う自治体
まずは、全国の自治体の対応についての報告です。通信社の記者が利用を拒否した事例を紹介しました。山形県が、右派系市民グループの生涯学習センターでの利用申請を「総合的な判断」として拒否した例や、大阪の門真市が市の文化会館での差別的なテーマを掲げた講演を「公の秩序や善良な風俗を害するおそれ」という施設の設置条例を根拠に取り消した例などを報告。
しかし、このように対応した自治体はむしろ例外で、「表現の自由の問題から介入をためらう自治体も多く、どう対応してよいのか戸惑いが広がっている。結果的にヘイトスピーチの多くが規制されずに放置されている」と指摘しました。
しかし、このように対応した自治体はむしろ例外で、「表現の自由の問題から介入をためらう自治体も多く、どう対応してよいのか戸惑いが広がっている。結果的にヘイトスピーチの多くが規制されずに放置されている」と指摘しました。
憲法学者の見解は
一方、憲法学者の間からはどのような見解が出されているのか。憲法学者で早稲田大学大学院の戸波江二教授は、「日本が加入している人種差別撤廃条約の下では、政府や地方自治体には差別言論を助長させず、禁止・終了させる義務を負っている」としました。
しかし、憲法学者の間では、規制には消極論が優勢だとしています。その理由について、戸波教授は「戦後の護憲の流れのなかで、政府による言論の統制を許さないという強い信念があることが背景にある」と説明。法解釈上も、一律には対応できない難しさが浮かび上がりました。
しかし、憲法学者の間では、規制には消極論が優勢だとしています。その理由について、戸波教授は「戦後の護憲の流れのなかで、政府による言論の統制を許さないという強い信念があることが背景にある」と説明。法解釈上も、一律には対応できない難しさが浮かび上がりました。
規制と表現の自由 両立の道は
両立できる道はないのか。東京弁護士会の弁護士は、公共施設での規制について、弁護士会の中に作ったプロジェクトチームでの検討結果を報告し、▽人種差別行為が行われるおそれが客観的な事実に照らして具体的に認められる、などの厳格な要件を満たす場合に限定することや、▽判断が恣意的(しい)にならないように第三者の意見を聞く仕組みを作ることなど、自治体側がガイドラインを作成することで、表現の自由を配慮しながら、規制することが可能だと訴えました。
東京弁護士会では自治体がガイドライン作りの際に参考にできるパンフレットを作成し、年内には東京都内のすべての自治体に配布する計画だということです。
東京弁護士会では自治体がガイドライン作りの際に参考にできるパンフレットを作成し、年内には東京都内のすべての自治体に配布する計画だということです。