【レビュー】
一冊の本がきっかけで、人生が変わることがある。京大卒カリスマニートとして有名なphaさんの一冊目の著書『ニートの歩き方』(技術評論社)が僕の人生に与えた影響は大きい。『ニートの歩き方』を読んだことがきっかけで僕はブログを書き始め、そのブログがきっかけになり自分でも本を三冊ほど出すことになり、最終的には会社を辞めてフリーランスになる決意をした。あの時書店で『ニートの歩き方』を見つけて買っていなかったら、たぶん僕はブログを書きはじめることもなかっただろうし、こうやってマイナビニュースに何かを書くということもなかっただろう。
今回紹介する『持たない幸福論』(pha/幻冬舎/2015年5月/1200円+税)は、そんな『ニートの歩き方』をより一般向けにした本だと思うとわかりやすいかもしれない。『ニートの歩き方』はニート的な生活を送りたい人へ向けての実践マニュアルという意味合いも強かったが(もちろんそうじゃない人が読んでも面白いのだが)、本書はどちらかというと理論が中心で、ニートになる予定がない普通の会社員が読んでも役に立つ内容になっている。「大学を出て新卒で正社員になる」ことや「X歳までに結婚してX歳までに子供を作らないと負け組」といった世の中の規定するプレッシャーに少しでも違和感を抱いたことがある人は、読んでみると新しい発見があるに違いない。
pha『持たない幸福論』(幻冬舎/2015年5月/1200円+税) |
本書の著者であるphaさんのことを知らない人もいるかもしれないので、簡単にphaさんの経歴を紹介をしておこう。phaさんは京都大学を6年間かけて卒業し一般企業に就職するものの、「働きたくない、だるい」という気持ちが強くなり数年で会社を辞めた。それ以降は定職につくことなくブログを書いたりWebサービスを作ったりして暮らしている。大学時代の寮生活の経験を活かし「ギークハウスプロジェクト」というシェアハウスプロジェクトの発起人になったりもしている。
phaさんはカリスマニートとよく言われるが、いわゆる親のすねをかじっているニートと違ってphaさんは自活しているので、そういう意味ではニートというよりフリーランスといったほうが実際には正しい。しかし、精神的にはやはりニートに近い。たとえば、多くのフリーランスがお金はしっかり稼ぎたいと考えるのに対して、phaさんはお金よりも圧倒的に時間に重きを置いている。phaさんにとっては、毎日会社に決められた時間に通ってしっかりお金を稼ぐことよりも、たとえ収入は少なくとも自分のペースを保って生活に実感を持ちながら暮らすことのほうが遥かに大切だからだ。
現代日本の価値基準からすると、phaさんのような生き方には実際のところ批判も多いだろう。「若いものがそうやってダラダラ暮らしているなんてけしからん」「人間は仕事をしてこそ一人前だ」「若いうちはなんとかなるかもしれないが、老後はきっと困るはずだ」といった忠告が今にも聞こえてきそうである。
しかし、こういった忠告は、実際のところ社会や世間が規定した「こうあるべきだ」という一つの価値観に基づくものでしかない。毎日会社に通って生活に十分なお金を稼ぐことができても、自分のペースを保って働くことができないのであればそれは見方によっては大きな不幸だと言える。結局、大事なのは自分が何をしているときにいちばん充実や幸せを感じられるかといった価値基準の問題にほかならない。世間のプレッシャーに流されて、それで本当に自分が幸せだと感じられることができないのだとしたらそれは大きな問題だ。
「正社員にならねば」「結婚しなければ」「子どもを作らねば」といった「こうあらねば」が日本社会にはたくさん存在している。これが本当に自分の本心から来ているものであればいいが、ただ世間のプレッシャーに負けてそう思い込んでいるだけだとしたら、本書を読んで、一度自分の価値基準を考えなおしてみてもいいのかもしれない。
『持たない幸福論』という書名があらわすように、本書の基本的なテーマは「世間の価値観ではなく自分の価値観に照らして、必要ないものは持たない」というものだが、それでも例外的に持つことを推奨されているものがある。それは「知識」だ。具体的には、読書をすることが強く推奨されている。
これは僕も強く同意したい。人は知識を得ることで、今の時代の価値観を相対化して見ることができるようになる。読書をして知識を得ることは、自分の価値基準を持つことに大きく資するはずだ。本書でも言われているように、読書にはほとんどお金がかからないというのもいい。
実は本書は、良質なブックガイドとしても利用できる。本文中では多くの本が参考文献として取り上げられているが、いずれも面白い本が多いので興味を持った人はぜひそちらも読んでみて欲しい。
<著者プロフィール>
日野瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。
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