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「生活か観光か」 鎌倉・住宅街の文化施設計画で論議

カナロコ by 神奈川新聞 7月24日(金)7時5分配信

 鎌倉市が開設準備を進める「鎌倉歴史文化交流センター(仮称)」の運営方針が論議の的になっている。周辺住民の生活環境に配慮して「開館時間は午前10時から午後4時までの6時間」「日曜・祝日は休館」としたが、市議会からは集客効果への疑念が根強い。開館時間の短縮は入場料収入の減少に直結するため、将来的に財政の負担増となって跳ね返る可能性も否めず、2016年10月予定のオープン後も運営の検証を迫られそうだ。 


 センターはJR鎌倉駅西口から徒歩10分弱の市内随一の高級住宅地にある建物に整えられる。土器などの出土品に触れられる展示やジオラマ、集会・学習スペースなどを設け、児童・生徒や観光客が歴史や文化を学ぶ場とする計画だ。

 だが計画段階から、周辺住民が難色を示していた。「現状でも観光客の人通りが多いのに、施設が増えれば住環境が悪化する」(住民)との懸念からだ。予定地は閑静な住宅地のなかで、市内の名所の一つでもある銭洗弁財天への参観コースの途中にある。
 
○一度は白紙に
 センターは当初、鎌倉市などが登録を目指した世界文化遺産のためのガイダンス施設となる計画だった。しかし13年4月末、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が不登録勧告をしたことで、機運がしぼんだ。「14年度中の開設」との計画も、一度白紙に戻っている。

 市はセンターの整備へ計画を練り直したが、「第1種低層住居専用」だった建物を用途変更する必要もあり、住民説明を慎重に進めた。協議を重ねた結果「午前10時〜午後4時」「日曜・祝日は休館」の開館時間短縮方針に落ち着く。15年度当初予算編成時に16年1月を予定していた開設も、同年10月に遅らせた。

 センターの入場料は、鎌倉国宝館(雪ノ下2丁目)や鏑木清方記念美術館(同1丁目)など、周辺施設と同程度の200〜300円を予定する。年間来館者数は、国宝館の実績と同じ約6万人を見込む。

 年間運営費は約4500万円で、入場料収入として想定する約1千万円を充てるが、残り約3500万円は一般財源で補う。来館者数が市の想定より少なければ、財政からの持ち出し増加は避けられない。
 
○「成り立たぬ」
 市歴史まちづくり推進担当は「国宝館と同じぐらい来館があればよいが、(観光客の多い)日曜・祝日が休館では容易ではない」。だが来観者が多ければ閑静な住環境に悪影響を及ぼしかねず、“痛しかゆし”の構図だ。

 「この開館時間・曜日で文化観光施設として成り立つのだろうか」、「多くの人にとって来館は難しいのでは」、「近隣住民に理解を得る努力も必要」−。

 市議会6月定例会で開かれた教育こどもみらい常任委員会では、運営方針への批判が相次いだ。「もう無理して整備しなくてもよいのではないか」といった厳しい意見も出た。

 同推進担当は「当面はこの方針で運営し、時期を見ながらあらためて住民との意見交換を行いたい」と答え、開設以降の見直しの可能性を示唆した。

◆鎌倉歴史文化交流センター(仮称)
 敷地約9500平方メートル、建物2棟延べ床計約1400平方メートルで構成する。元は住宅として使われており、所有者だった都内の財団と企業が2013年3月に市へ寄付した土地・建物の一部を活用する。開設のための予算は、計4億円超。教育・文化施設の建設費名目で財団から寄付された約15億円も充てる予定。

最終更新:7月24日(金)7時5分

カナロコ by 神奈川新聞