「オウンドメディアはコスパのいい広告ですか?」、バーグハンバーグバーグ柿次郎氏インタビュー
動画ではなくGIF画像? ヒットを飛ばすための工夫の数々
独自の「笑い」を生み出すテクニックはバーグハンバーグバーグの強みであり、絶対にはずせない要素だが、「みんなのごはん」では記事をヒットさせるために、それも見直す必要があった。
柿次郎「いままでのバーグハンバーグバーグの表現は、お笑いの部分がシュールで強すぎるきらいがありました。人を選ぶというか。そこで『お笑いの部分がシュールすぎると、グルメの情報を欲している人には届きにくくなるのでは?』と仮説を立てて、そこの温度感をコントロールするようにしました」
ソーシャルメディアでの拡散を高める工夫も怠らない。動画が注目されるなか、あえて昔からある「GIF画像」を取り入れた。静止画像のアニメ―ションをループ表示するGIF画像はTumblrなどのソーシャルメディアで人気を博していたが、グルメ記事で使われることは当時ほとんどなかった。
柿次郎「あるときからTwitterが、GIF画像を添付すると自動再生してくれるようになったんです。少し前からLINEの谷口マサトさんの記事でも、GIFを有効活用した素晴らしい表現をやられていたので、グルメの枠でも何かできるんじゃないかと。そこで精肉をマッサージするGIF画像を添付してツイートしたら、バカバカしさがダイレクトに伝わったのか、ものすごく拡散されました」
画像をつかった工夫はほかにもある。
柿次郎「もうひとつ、まとめ画像をイラストで再現して作るというのをやり始めたんです。『目玉焼きに一番合う調味料はなにか?』を検証する記事では、味博士という人が開発した味覚センサー『レオ』でうまみ成分を数値化して分析。1位「塩」、相性度は98.5ポイント、2位「醤油」……のように数字を出した。これを単純にテキストで紹介するのではなく、情報整理したイラストを記事最後に載せました。ツルツルっと読んじゃう人がいても、このイラストだけ見れば結果が分かる。さらに、この画像付きで告知ツイートすれば、Twitter上の反応も良くなるんですよね」
記事の最後にダメ押しのまとめ画像、それを使ってソーシャル拡散。一粒で二度おいしい画像活用だ。ところで、バーグハンバーグバーグの記事は1ページが非常に長い印象を受けるが、ページ割りはしないのだろうか?
柿次郎「メディアにもよりますが、たとえばSEO目的で記事をつくったとき、ページ分割するとSEOが効きにくくなるらしいので、メディアの特性に合わせています。そのため、1ページでどれだけ情報を詰め込めるのか、離脱率を下げるにはどうすればいいのか、といった視点で編集することも多いです。また、ツルツルと読めすぎてしまうときは前述のような目が留まる工夫をしたり。そういう感覚を客観的に計算して落としこむようにしています。その結果、バーグのコンテンツは離脱率が低く、平均滞在時間5分以上というのも珍しくありません。70~80%の人は全部読んでくれている印象ですね」
地元を題材にしたメディア「ジモコロ」に関わる人たち
今年5月にローンチした「ジモコロ」は、アイデムの地元に強い求人サイト「イーアイデム」が展開するオウンドメディアだ。読売広告社からバーグハンバーグバーグに声がかかり、コンテンツ制作はバーグハンバーグバーグが担当、ブログサービスは「はてなブログMedia」を使うことになった。ブログとしての使いやすさはもちろん「はてなブックマーク」での反応を重視する柿次郎氏の選択だった。
そして柿次郎氏が何よりも大事にしているもの、それは関わる人たちの熱量だ。
柿次郎「僕が過去にやった仕事で結果が出たものってちゃんと『感情が入っているもの』なんです。担当の人を好きになったり、友だちの案件だったり。『よーし、やったろ!』みたいな感情が入ったときこそ不思議と結果が出る。ジモコロもその熱量を生む環境を意識しました。
一般的に、会社の規模が大きくなればなるほど、数字やクライアントの顔ばかり見る人、現場の作り手に敬意のない人っていうのが増えていくんですよ。そういう人たちと仕事をすると『右向け!右!』じゃないですけど、本来届けるべきユーザーとは真逆の方向を強制させられる場合が多いんです。でも、声をかけてくれた読売広告社のチームは違いました。『バーグさんがやりたいと思うことを僕たちが全力で通すようにする』という言い方をしてくれたんです。
ジモコロが始まる直前には関係者で飲み会をやり、そこでアイデムさんの老舗ならではの悩みなどいろいろな話が聞けて。その時間を通じて、全員が同じ方向を向ける人たちだなと感じることができました。
大きい会社にとってのオウンドメディアの位置づけってまだまだ低いですし、新しいチャレンジは社内でつまはじきにされることが多い。でも、コミュニケーションを軸に熱量をみんなでガっと引き上げていくようにすると、オウンドメディアが他人事(ひとごと)じゃなくなるんです」
MarkeZine「数字を使って根拠立てて話すのが正しいみたいに思われがちですが、感情の持つ力を引き出せる人は少ないですよね。コーチングや『チームのやる気を引き出す』みたいなのはビジネス書でもよくありますけど、柿次郎さんのはそういうのとも違いますね」
柿次郎「ただ感情に訴えかけているだけですからね(笑)。あとは、顔色を窺わず、できるだけ正直に言うようにしてます。『これはイヤです』って。ほんとはよくないなって思うことがあっても、衝突を避けて『いいですね!』とか言わない。うちの社風なのかもしれません」
MarkeZine「仕事をしていると『大人になれよ』と言われることもあると思うんですが」
柿次郎「むしろ子ども的な感情を強く持ってますね、会社として。うちの社長がまさにそうなんですけど。子ども的な感情を自社のノウハウとロジックで説明するっていう感じだと思います」
クリエイターの立場から見たオウンドメディアの問題点
話はさらに、オウンドメディアとそれを支えるクリエイターの環境にまで及んだ。
柿次郎「僕がメディアについて言いたいのは、無意識にクリエイターをないがしろにする会社が増えていること。そこに対しての怒りがあるんです。まず、自分たちで勝手に作った評価指数を押しつけてくる。予算に対して十分な結果を出したとしても、向こう基準の評価指数で『このライターさんは今後NGで』と言われることもあるんです。内容に対する評価ではなく、上澄みだけの部分で判断されると、作り手のモチベーションは下がってしまう。取材をしないで画像は出典引用、誰かの一次情報をただ並べて、週刊誌的な見出しであおれば、安い予算で数値を出すことは誰でもできる。でもそれではメディアにファンはつきません。
なぜこうなってしまうのか、僕なりにずっと考えていたのですが、もしかしたら作り手をないがしろにする人って、オウンドメディアは『コスパのいい広告』ぐらいにしか思ってないのかなと。大企業の広告プロモーションで何百万、何千万円というプロモーション費をかけたけれど100ツイートもいかなくて、誰の目にも届いていないものもザラにある。それなのに『ウェブメディアの1記事に数十万円もかけるんだったら、最低1000ツイート、1000いいね!は欲しいよね』という考え方で話をされると困りますし、その目標を達成するためにSNSの数値をお金で買う業者も横行するわけです。そうなると本末転倒じゃないですか。僕たちはコスパのいい広告を作る人たちじゃないんです。
僕は編集者なのでよけいにそう感じるのかもしれません。ライターやイラストレーターがみんな余裕のある暮らしをしているわけではないですし。3年後、5年後に残るメディアを作るのであれば、現場で動く作り手にお金を落とす仕組みが必要。でなければ、業界が先細りになるのは目に見えています。だからこそ、オウンドメディアは「予算」と「覚悟」を持つべきだと思うんです」
インタビューを終えて
コンテンツマーケティングの重要性が高まっているものの、コンテンツそのものについての話が少ないと感じていました。ここでは紹介しきれませんでしたが、柿次郎氏にはネットのコンテンツ、編集者という仕事について予想を超えるさまざまな話をしていただきました。「ジモコロ」を立ち上げたアイデムと柿次郎氏が登壇する、はてな主催のオウンドメディアのセミナーが8月下旬に開催されるということなので、そこでもいろいろお話が聞けそうです。お楽しみに。バーグハンバーグバーグと柿次郎氏が何を見せてくれるのか、これからも注目です。(MarkeZine編集部 井浦薫)