上海株は中国共産党の市場統制強化によって暴落に「歯止め」がかかったように見えるが、中国経済は閉塞状況にある。上海株暴落は、慢性デフレ不況の症状すら見せている実体経済の惨状を反映した。党指令型経済モデルが破綻したのだ。
中国は今年4〜6月期の国内総生産(GDP)の実質成長率が年率で7%と発表している。党が目標とする水準そのもので、党官僚が明らかに鉛筆をなめた作文と言っていい。まともなエコノミストやメディアなら、どこも信用しないだろうが、残念なことに、北京の顔色を気にする日本の多くのメディアやエコノミストは「大本営発表」を無批判に受け止めている。
そのインチキぶりを示すのがグラフの鉄道貨物輸送量である。同輸送量もGDPと同じく、中国国家統計局がまとめるのだが、李克強首相は以前に「GDPは作為的だが、鉄道貨物輸送データは運賃を基本に集計するので信用できる」と米国の駐北京大使に打ち明けている。輸送量は2014年初め以来、下がり続けている。今年6月までの12カ月合計を前年同期に比べると実に7・6%減である。
消費者物価指数もなだらかながら、下落が続いている。中国は内需減退でマイナス成長の局面にあるとみてもおかしくない。もし、7%も生産が伸びているとしたら、莫大な過剰生産を続けているだけであり、企業は過剰在庫をさらに増やしているはずである。
注目すべきは、人民元の実効相場である。実効相場はドル、円、ユーロなど他の通貨との交換レートを貿易量に応じて加重平均した値である。元相場は実体経済の下降とは対照的に上昇を続けている。円に対しては50%以上も高くなった。道理で、日本製品は超安になるはずで、日本へ爆買いツアーが殺到する。