コラム:ギリシャ支援合意に残る「後味の悪さ」
Hugo Dixon
[アテネ 13日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 異例の長時間に及んだユーロ圏首脳会議におけるギリシャと債権団の交渉は、後味の悪さを残した。
ドイツがギリシャは欧州の信頼を失ったと指摘したのはその通りだ。とはいえ、ギリシャをあれほどまで厳しく追い込み、あまつさえ当初は同国にとって侮辱的とも評されるような考えを提案したことで、ドイツもまた欧州の信頼を喪失しかけている。ギリシャのチプラス首相とドイツのメルケル首相はいずれも、信頼回復に努めなければならない。
もっとも首脳会議で得られた合意結果は、厳しい内容であるにしてもまずまず妥当に見える。「ギリシャは5年間ユーロ圏を離脱し、500億ユーロの国家資産をルクセンブルクに設立する基金に移管すべき」といったギリシャなどの猛反発を誘ったドイツの提案は却下された。
ギリシャが通貨ドラクマを復活させるとの話も浮上せず、新たな「民営化」基金はギリシャ国内に置かれることになる。
それでもドイツは、当初提案により、他の欧州諸国の印象を悪くした。これで生まれたツイッターのハッシュタグ「ThisIsACoup(これはクーデター)」は世界第2位の人気となった。ある時点ではドイツの強硬姿勢は、同国とフランスやイタリアなどとの深刻な対立につながりかねなかった。
一方ギリシャは、これから数日の間に、ずっと先送りしてきた一連の改革措置を法制化しなければならない。年金制度の持続可能化や付加価値税(VAT)の簡素化といった措置のほとんどは望ましい内容で、やがてはギリシャの経済状況を上向かせるはずだ。
だが当面のギリシャの見通しは厳しい。その大部分は政府が自ら招いた、といえる。チプラス氏は6月に、最終的に調印した内容よりもまだましな条件で合意しようと思えば可能だった。ところが実際には国民投票を発表して財政再建案の拒絶を呼び掛け、銀行の営業停止と経済の急降下という連鎖反応を引き起こしてしまった。さらにこの破滅的な政治手法を駆使して債務減免を勝ち取ることにも失敗した。ギリシャが改革に実際に着手した後で初めて債務負担軽減を検討する、というのが債権団がようやく受け入れた合意内容だった。 続く...