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ギリシャ支援「合意」 異例の17時間協議…独「一時離脱」提案、ユーロ圏に禍根

産経新聞 7月14日(火)7時55分配信

 【ベルリン=宮下日出男】欧州連合(EU)のユーロ圏首脳は約17時間に及ぶ異例の長時間協議の末、ギリシャの金融支援問題で合意にこぎ着けた。難航した協議で特に目立ったのが、ギリシャは財政再建策を実行するのか−というドイツ側の強い不信感だ。ギリシャに「ユーロ圏からの一時離脱」を迫ることも辞さない姿勢を示したほどで、今後のユーロ圏の結束に禍根を残す恐れがある。

 「メリットがデメリットを上回った」。ドイツのメルケル首相は13日、ユーロ圏首脳会議後の記者会見で、ギリシャとの支援交渉開始の合意についてこう分析した。記者団にギリシャが改革を履行すると思うかと問われると、「今回の交渉から判断すると、長くて困難なものになるだろう」と述べた。

 12日午後に始まった首脳会議は、日をまたいで約17時間に及んだ。事態打開のため、トゥスクEU大統領やオランド仏大統領は2回にわたってメルケル氏とギリシャのチプラス首相と4者会談を行った。

 難航の予兆は11、12日のユーロ圏財務相会合で表れていた。ギリシャの財政再建策を不十分とみるドイツのショイブレ財務相は、改善策受け入れを渋った場合、ギリシャは「ユーロ圏から5年間、離脱する」という異例の提案をしたからだ。最終的には首脳会議の声明には含まれなかったものの、各国メディアは相次いで速報し、衝撃の大きさを示した。

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 支援問題はこれまで、ギリシャとドイツの対立という側面が強かった。緊縮策をEUの押しつけと受けとめるギリシャは、その背後に財政規律を重視するドイツの存在があるとみて、攻撃の矛先を向けた。チプラス政権は第二次世界大戦中のナチス占領による賠償問題まで持ち出し抵抗した。

 一方、最大の支援負担国でありながら批判されたドイツ側では、ギリシャが一方的に国民投票を実行したことで、不信感が頂点に達した。国内世論だけでなく、メルケル氏の与党の多くの議員も新たなギリシャ支援を支持したくない−との意向を示していた。

 メルケル氏は首脳会議前、「是が非でも合意しようと思わない」と強調。こうした厳しい姿勢はフィンランドなど欧州北部の国々からも示された。

 一方で、フランスやイタリアなどは「ギリシャのユーロ残留のためにあらゆる手を尽くす」(オランド仏大統領)とし、ユーロ圏内の立場の相違が露呈した。

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 ドイツ側が「一時離脱」の選択肢を持ち出したのは、ギリシャに確実な財政再建を迫る圧力だった可能性もある。ただ、欧州統合の歴史上初めて、ユーロ離脱が現実味を持って語られた意味は大きい。支援を受ける道筋がついたとはいえ、ギリシャの財政再建はいばらの道が続く。ユーロ圏内部の経済格差も課題となる中、離脱の議論は、欧州の「連帯」に暗い影を落とす可能性がある。

最終更新:7月14日(火)15時31分

産経新聞