石川県の小松空港、今や福井県の空港に? 北陸新幹線で交通事情一変
福井新聞ONLINE 7月14日(火)8時16分配信
小松は今や福井の空港?―。3月の北陸新幹線の金沢開業から4カ月近くたち、北陸の航空事情が大きく様変わりしている。小松と東京を結ぶドル箱路線「羽田便」の利用者が新幹線に奪われ、最大で前年同月比4割減。回復の見通しは厳しい。このため航空会社や空港関係者は、新幹線が通っていない福井県内の利用客が「路線の命運を握る」とみる。福井県が「小松は福井の空港というくらいの思い」(西川一誠福井県知事)と位置付けていることもあり、福井方面の利用客を掘り起こそうと必死だ。
■到着口、すぐそこに恐竜
「僕の頭の中では日本海の海の幸が浮かんでいたんですが、恐竜とは…。ちょっとイメージが違ったな」―。小松空港の国内線到着ゲートの真っ正面。大口を開ける動く恐竜を見て、羽田からの出張客はびっくりの表情だ。恐竜は記念撮影用のパネルで高さ2・3メートル幅2メートル、「恐竜王国」の大文字で福井をアピール。センサーで人の動きに合わせて動く「フクイラプトル」の精巧さに、思わずスマホを向ける客も多い。
福井県の要請を受け、昨年11月に設置された動く恐竜は、当初はロビーの隅にあったが、県からの「ここでは、目立たない」との強い要望で、6月から到着ゲートの“1等地”に動かされた。
同じフロアのイベントコーナーでは、県が6月に県立恐竜博物館の恐竜グッズや、若狭の食をPRするフェアを2週続けて開催。さらにターミナルビル2階には、近く県のアンテナショップがオープン予定で、小松空港の福井化がどんどん進む。
空港を運営する北陸エアターミナルビルの澤守慶輔総務課長は「空港の駐車場は明らかに福井ナンバーが多い。国際線も含め、福井の利用客をどう増やすかが先行きを握る」と福井頼みを強調する。
■客が戻って来ない
「開業後しばらくは、ともかく、数カ月後には(お客が)戻ってくるとの期待はあったが、甘かった」。全日本空輸、日本航空の両社は羽田便が予想以上の苦戦という受け止め方だ。羽田便は、両社とも春から機材を小型化するなどして6往復をなんとか確保。航空運賃も「特割」「特便割引」など割引キャンペーンを展開し、新幹線並みをアピールしている。
ただ羽田便の利用者数をまとめている石川県空港企画課によると、新幹線開業の3月14日から6月末までは、33万6341人で、前年同時期の51万4243人に対し34・6%も減った。減り幅は3月こそ27%だが、4月38%、5月36%、6月34%台と推移。特に平日のビジネス客の減少が目立つ。「ツアー客よりビジネス客の方が収益性が高い。それだけに痛い。金沢方面からのビジネス客はよほどでないと、小松まで来ない」(日航北陸支店)と回復は簡単ではないとみる。
■営業マンは福井詣で
日航北陸支店では、3月以降、伊東芳隆支店長(50)はじめ営業4人が連日、福井詣で状態。東京や首都圏に事務所を持つ会社、首都圏との強い取引を持つ会社などをピックアップ、「小松利用」を売り込む。「これほどの福井への営業強化はかつてなかった」(伊東支店長)という。
一方、全日空も今春に着任した石井祐司支店長(51)をはじめ4人が県内に出向く。旅行代理店を重点的に回り、接客時に割引運賃を説明してもらう「解説フリップ」を配布している。「福井の人は、東京へ行くなら、まず新幹線と考えるよう。ただ新たな需要開拓なら、福井は大事なターゲット。羽田からの乗り継ぎの便利さなど、空の便の優位性も説いていきたい」(石井支店長)と当面は地道な営業に力を入れる構えだ。
福井新聞社