【北京=永井央紀】中国の習近平指導部が、国内の安定を維持するために強硬策を相次いで打ち出している。先週後半から人権派弁護士や活動家を全国で一斉に拘束し、一時的なものも含めると100人超と前例のない規模になったもようだ。株式市場への介入を通じ株価押し上げにも躍起になっている。経済成長が鈍化するなか、社会の安定を最優先する姿勢が一段と鮮明になってきた。
中国の人権問題を扱うサイト「維権網」によると、13日午前8時までに当局に連行された弁護士や活動家らは合計107人に上る。湖南省、山東省など19の省市にまたがり、最多は北京の23人という。目立つのは北京の「鋒鋭弁護士事務所」に所属する弁護士だ。
「社会秩序を乱した重大犯罪の容疑」。国営通信社の新華社は同事務所の主任・周世鋒氏や有名女性弁護士の王宇氏らを刑事拘束処分にしたと大きく報道した。
習指導部が統制強化に動く背景には、経済成長の鈍化がある。
15日に発表される4~6月期の国内総生産(GDP)成長率は今年の目標である7%を下回るとの予想が多い。中国共産党内では「景気減速で社会不安が強まれば党への不満が高まる」との懸念が強まっている。
習近平国家主席は9月に訪米し、オバマ米大統領と会談する。米国との重要な政治イベントを控える時期にもかかわらず、米国を刺激しかねない人権派弁護士らの摘発に乗り出したのは、習指導部の危機感がそれだけ強いことの表れだとみられる。
中国国内では人権派弁護士らの拘束を伝えるNHKニュースが、当局の検閲とみられる措置で約2分間、中断した。菅義偉官房長官は13日の記者会見で「事実であれば憂慮せざるを得ない」と述べた。
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