ソウル中央地裁で今月3日午前、いわゆる「洗濯機破損事件」の初公判が開かれました。この事件は昨年9月、ドイツ・ベルリンで家電見本市「IFA」に参加していたLG電子の趙成珍(チョ・ソンジン)社長が、現地の家電量販店でサムスン電子の洗濯機を力強く押している様子が防犯カメラにとらえられたことが発端でした。両社は互いに「故意に製品を壊した」(サムスン)、「ライバル製品の耐久性をテストしただけ」(LG)と主張して譲らず、やがてサムスン電子は業務妨害、器物損壊、名誉毀損(きそん)の容疑で趙社長らLG電子の役員3人を告訴し、事件を法廷に持ち込みました。捜査に乗り出した検察は今年2月に趙社長らを在宅起訴し、この日、趙社長らが「被告」として法廷に立ったのです。
しかしこの日、法廷の周辺では「一体誰のための裁判なのか」との声が聞かれました。サムスンとLGは3月31日、この件を含め両社間で進行中の全ての法的紛争を終結させ、関係当局に善処を求めることで合意したと発表しました。その直後、サムスンは趙社長に対する告訴を取り下げました。告訴状を提出した当事者が「処罰を望まない」との意向を明確にしたのです。被害額がわずか数百万ウォン(数十万円)に過ぎない事件のせいで「グローバル市場で競い合うべき両社が韓国国内で不毛な争いばかりしている」という批判が高まったためです。
それにもかかわらず裁判が続いているのは、手続き上の問題によるものです。検察側は、名誉毀損については被害を主張する側が処罰を望まなければ裁判ができない一方、業務妨害、器物損壊はひとたび起訴したら裁判で結論を出すのが決まりだと説明しています。民事ではなく刑事訴訟のため、和解や告訴の取り下げとは関係なく裁判を進めざるを得ないというのです。
処罰の実益も名分もなくなったこの裁判で、罪を立証しなければならない検察も苦しい立場です。この日の公判に臨んだ検事が「すでに両社が和解しているのに、こうして裁判をするのはきまりが悪い面もある」と思わず本音を漏らしたほどです。そんな検事を相手に仕方なく弁論しなければならないLG電子、裁判のたびに自社が取り上げられるサムスン電子、そんな不毛な攻防を見守る裁判所。まさに誰のためにもならない裁判です。
この日、趙社長は約1時間半の公判の間中、一言も言葉を発することなく被告席に座っていました。公判後「(弁護人が)誠実にうまく説明したと思う」とコメントしてその場を後にしました。
近ごろ中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルスの流行やギリシャ財政危機のあおりで、韓国経済は内需・輸出共に低迷しています。特に、サムスン電子とLG電子がリードする電子産業は、収益性の悪化でいつになく苦戦しています。生き残り策を真剣に考えるべき同分野の最高経営責任者(CEO)や役員たちが法廷に立たされ、無意味な時間を過ごしているとなれば、その影響は他企業にも及びます。サムスンとLGの和解を無駄にしないよう、裁判所と検察には迅速に裁判を終えるための賢明な策を出してほしいと思います。