伊藤元重「瀬戸際経済を乗り切る日本経営論」

「理性が感情に負けた」ギリシャ、長く厳しい時代の始まりか

  • 2015.07.07
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 ギリシャ危機の最中、フランスのエクサンプロバンスで開かれた国際経済会議に参加した。今年で15回目となるフランスでは有名な会議である。一昨年に参加したときには、国際通貨基金(IMF)のトップであるラガルド専務理事と同じセッションで議論する機会があった。

 今回はフランス出身の米マサチューセッツ工科大学(MIT)教授で現在はIMFのリサーチの責任者であるオリビエ・ブランシャール氏と同じセッションの予定だったが、ギリシャ問題への対応が大変なのか、急遽欠席となった。

「理性が勝つか、感情が勝つか」

 会議の最終日の7月5日にはギリシャで国民投票が開かれた。 ギリシャ国民は欧州委員会の財政改革案を受け入れる提案に61%が「ノー」と答えた。客観的に見れば、ギリシャは欧州委員会の改革案を受け入れた方がよいと思ったのだが、そのような結果にはならなかった。

 会議に出席していたあるフランスの経済学者が発言していた。「冷静に考えればギリシャは欧州委員会の改革案を受け入れた方がよい。そう分かっている国民が多いだろう。ただ、感情的には、欧州委員会の改革案に反発を感じる国民も多い。理性が勝つか、感情が勝つか、分からない」

 さて、今回の会議に参加するにあたって、さぞ当地ではギリシャの問題一色になるだろうと考えていた。しかし、ギリシャの問題は驚くほど表に出てこない。パーティーの会話や新聞の紙面などではギリシャ問題が花盛りだが、肝心の経済会議の中ではギリシャ問題がそれほど大きな話題になっていない。会議のテーマが「雇用」であったので、ギリシャ問題を今ここで緊急に論議する必要性を、参加者が感じていないということだろう。

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