テレビ局と新聞社を黙らせる総務省の「電波社会主義」
ただ、昨年も6400億円以上の経常利益を出したドコモが500億円ぐらい損しても、利用者には何の影響もない。問題はこんな無意味なサービスに、貴重な電波が浪費されていることだ。
下の図は、総務省の公表している電波の利用状況だ。民放の使っていた170~205MHzは「公共・一般業務(移動)」ということになっているが、まったく使われていない。その下のNHKの使っていた95~108MHzは、電波を止めることが決まってから14年たっても、いまだに何に使うのかさえ決まっていない。
要するに、全国のテレビ電波を無理やり止めて空けたアナログ放送の跡地は、がら空きなのだ。この帯域だけでも放送に利用すれば、新しい技術(H.264など)なら30局以上のテレビ局が放送できる。さらにUHF帯の空き帯域(ホワイトスペース)を有効利用すれば、合計100チャンネル以上の放送ができるのに、ほとんどの周波数は使われていない。
これは総務省が周波数オークションを拒否し、電波を社会主義的に割り当てるからだ。民主党政権の時代に総務省はオークションの導入を決めたが、自民党政権に元に戻してしまった。全国のテレビを止めた電波の跡地は、誰にも使われないまま放置され、その時価は2兆円以上と推定される。
自民党の勉強会で百田尚樹氏の発言が問題になったが、そのとき彼は「テレビの広告料ではなく、地上波の既得権をなくしてもらいたい。自由競争なしに50年も60年も続いている。自由競争にすれば、テレビ局の状況はかなり変わる」とも指摘したのだが、これはテレビ局も新聞社も報じない。
日本のような民主国家で、露骨な言論弾圧が行なわれることはありえない。それより問題は、電波利権を梃子にしてテレビ局と(その系列の)新聞社を黙らせる総務省のような「暗黙の言論弾圧」である。それを批判することは大手メディアには期待できないので、ネットメディアがその役割を果たすしかない。