阿久津篤史
2015年6月30日11時38分
2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場について、下村博文文部科学相は30日、閣議後の記者会見で、設置を先送りした開閉式屋根がない期間、運営収支が赤字になる見通しを示した。「JSC(事業主体の日本スポーツ振興センター)が直接、管理運営をするのは能力を超えたことと思う」とも述べ、五輪・パラリンピック後は民間に委託し、収支改善を目指す方針を明らかにした。
JSCが昨夏公表した試算は、収入38億円、支出35億円で年間3億円の黒字だった。文科省によると、建設費が基本設計時から900億円増えて2520億円になった影響で維持管理費も増える。一方で、屋根がない期間は周辺住民への音漏れの配慮などからコンサートが想定した回数を開けないほか、屋根を設置する工事期間は競技場が使えなくなるため赤字になるという。金額は明かさなかった。設置時期は未定で、設置費用は五輪後の資材、人件費にもよるとして明らかにしていない。下村文科相は「(開閉式屋根の工事は)時間がかかるので、その分赤字になる。作れば絶対に黒字になるという計算はできる」と述べた。
民間委託については五輪開幕を待たずに有識者による検討会議を設置する方針で、五輪・パラリンピック閉幕後すぐ委託できるよう議論を先行させる。下村文科相は「国民の税金の負担にもならないように考えるようにしたい」と述べた。
基本設計時から増えた900億円について、下村文科相は「サッカーくじによる対応が大きい。民間の力も借りながら、国費などの負担が増えないようにする」と述べた。東京都にも500億円程度の負担を求める方針。文科省と都の調整役を務める遠藤利明五輪担当相はこの日の記者会見で、森喜朗組織委会長から「国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長から、国立競技場について7月末のIOC総会前にはまとめてほしいと要請されている」との話があったことを明かし、「一日も早く決着をつけたい」と述べた。(阿久津篤史)
PR比べてお得!