特別企画
オールフラッシュにオープンソース、“IT-as-a-Service”のトップを目指すEMCの新テクノロジ
(2015/6/30 06:00)
「製造立国の日本はIoT(Internet of Things)の要素技術で大きな強みをもっている。国内においてもB2CからB2BへとIoTが広がろうとしているこの流れを、EMCグループ全体で支援したい」――。
6月25日、EMCジャパン 代表取締役社長 大塚俊彦氏は報道陣向けの説明会でこう強調した。すでに300億を超えるデバイスがつながっているとも言われる現在、その膨大なモノが発するデータはどのように扱われるべきなのか。グローバルにおけるIoTへの注目度の高まりに伴い、5月に米国ラスベガスで開催されたEMCの年次カンファレンス「EMC World 2015」でもIoTを意識した発表が数多く行われた。
本稿では25日に行われたEMC World 2015報告会の内容をもとに、EMCが現在フォーカスするいくつかの新技術について取り上げてみたい。
「EMC World 2015」で発表された注力技術
大塚社長は以下の3つの分野における5つのテクノロジをEMC World 2015でのハイライトとして紹介している。
1)次世代フラッシュストレージ
・オールフラッシュアレイの最新モデル「XtremeIO4.0」 / 2014年に買収したDSSDの技術を実装したソリューションの年内リリース
2)Software-Defined Storage
・汎用サーバーを統合し、スケールアウト型SANストレージとして扱うソフトウェア「EMC ScaleIO」の無償版(開発環境)提供
・EMCアレイと他社ストレージを統合管理する「ViPR Controller」のオープンソース化
・OpenStackにコミットした新プロジェクト「CASPIAN」の始動
3)クラウドに特化したコンバージドインフラストラクチャ
・1000ノードまで拡張可能なラックスケール型のハイパーコンバージドインフラストラクチャ「VCE VxRACK」
これらの重点分野に対しては、EMCはもとよりVMware、Pivotal、VCEといった、いわゆる“EMCフェデレーション”の各社と共同戦線を張りながら、グローバルで注力していく構えだ。
大塚社長は「われわれはインフラストラクチャを提供する企業であり、ハードにもソフトにも投資を続けていく。EMCは売上の12%をR&Dに、10%を買収に投資しているが、こうした投資から獲得した新技術をスピーディに市場に投入し、フェデレーションの力を発揮してイノベーションに貢献していきたい」と語っており、あらためて最新のインフラにこだわり続けていく姿勢を明らかにしている。
XtremeIOとDSSD オールフラッシュアレイはEMCの看板製品に
ハイライトとして発表されたテクノロジのうち、発表同日に国内提供が開始されたのがオールフラッシュアレイの「XtremeIO 4.0」だ。XtremeIOシリーズは「X-Brick(ブリック)」と呼ばれるビルディングブロック(コンポーネント)を基盤にしているが、最新版のXtremeIO 4.0ではブリック1台あたり40Tバイトの高密度を実現しており、これを最大8ブリックまで拡張することができる。
EMCジャパン 執行役員 システムズ・エンジニアリング本部長 飯塚力哉氏は「最新モデルでは、重複排除を生かせば最大2PBまで拡張することも可能。データをリバランスしながら、パフォーマンスを下げることなく、オンラインでブリックを拡張することもでき、リード/ライト混在でも120万IOPSを実現する。VMwareやOracle、Microsoft SQL Serverなど主要なエンタープライズアプリケーションにも自動で同期することが可能。ミッションクリティカルに使えるオールフラッシュアレイの決定版だ」と語る。
フラッシュに関するもうひとつの大きな発表として挙げられたDSSDは“ラックスケール型のオールフラッシュアレイ”と位置づけられており、最大で36のフラッシュモジュール(2TBまたは4TB)から構成され、最大144TBまでをサポートする。
サーバーとはPCIeでダイレクトに接続され(DSSD PCIe Client Card)、通常のブロックI/Oのほか、Hadoopのネイティブアクセスもサポートする。EMC World 2015では、50TBのHadoopデータを通常のDASとDSSDでそれぞれダウンロードを行う比較デモが行われ、DASの30分に対し、DSSDは30秒で完了したという数字が残っている。
飯塚氏はDSSDを「新しい環境に適応しやすい、進化する形のオールフラッシュ」と表現しており、ユーザーが自由にフラッシュモジュールを追加できる柔軟性と拡張性のメリットを強調する。
「XtremeIOはEMC製品の中でもワールドワイドで非常に力強い成長を遂げている」(飯塚氏)という、オールフラッシュアレイへのニーズを受け、EMCは今後さらにこの分野のポートフォリオを拡大していく意向だと思われる。まずはDSSDの正式リリースが待たれるところだ。
Project CoprHD ViPR Controllerのオープンソースプロジェクト
「EMCとオープンソースという組み合わせに首をかしげる向きも多いかもしれないが、これからのインフラには、オープンというキーワードは、スケーラビリティやアジリティとともに欠かせないものだと確信している」という大塚社長の発言にある通り、EMC World 2015では、EMCによるオープンソースへのコミットがはっきりと表明されている。これまでの同社のオープンソースに対するアプローチと比較すると、かなり踏み込んだ内容だといえるだろう。
その中でも注目されたのは、EMCのSoftware Defined Storageを象徴する「ViPR」のオープンソース提供だ。正確には「EMC ViPR Controller」をベースにした「Project CoprHD」のソースコードを、近日中にてオープンソース(Mozilla Public License 2.0)として提供するというもので、すでに一部のコードはGitHubから利用できるようになっている。
ViPRはEMCのSoftware Defined Storageを象徴するプロダクトだが、これをオープンソース化することでコミュニティの拡大を図り、ストレージのコモディティ化を推進している立場を明確にしたい意向だと思われる。ただし、CoprHDとViPRはコア部分やメイン機能は共通するものの、ViPRの商用販売は引き続き行われるため、サポートやオプションで差別化が図られる予定だ。
EMCは同時に、オープンソースのクラウド統合基盤であるOpenStackへの対応を強化するとしており、「Project CASPIAN」というOpenStack関連プロジェクトの発足も発表している。CASPIANでは「OpenStackベースのアプライアンス(またはコンバージドインフラ)をリリースする可能性もある」と飯塚氏は語っているが、詳細は未定だ。ただ「EMCはこれまで以上にOpenStackに深くかかわっていく」(飯塚氏)ことだけは確かなようだ。
*****
「EMCはソフトウェアによってITを仮想化することを非常に重視している企業。そして仮想化にあたってはユーザーに選択肢を提示する必要がある。ブロック、ファイル、オブジェクトといったあらゆるタイプのストレージがEMCのラインアップにはそろっているが、これらを共通のインターフェイスから単一の環境として扱い、IT-as-a-Serviceを実現していくことがわれわれの使命」という飯塚氏のコメントにあるように、IoT時代を迎えるにあたって、どんなデバイスのどんなデータであっても、また、その量がたとえどれほど膨大であっても問題なくスケールし、俊敏かつ柔軟にアクセスできる環境が必要になる。
オールフラッシュアレイやSoftware Defined Storageなどは、まだ一部の先進的なユーザーためだけの技術と見られがちだが、いまや最新技術に投資することとコモディティを促進することは相反する概念ではない。そして大塚社長も指摘している通り、IT-as-a-Serviceを目指すなら、オープンという姿勢、特にコア部分となる技術の標準化に貢献する姿勢が求められる。
あらゆるデータを受けとめ、さまざまなアクセス手段を提供するストレージをよりコモディティなインフラとして提供していく――。IT-as-a-Serviceを掲げるEMCの新しい戦略が奏功するか否かは、同社が“オープン”という言葉をどう定義し、どのように市場とコミュニティに対していくのか、そのアプローチが大きな鍵になりそうだ。
URL
- EMCジャパン株式会社
- http://japan.emc.com/
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