前編はこちらからご覧ください。
自分たちでコンテンツを作る
佐々木 「くらしのきほん」というタイトルはどうやって決まったんですか?
松浦 僕は当初、「ライフパッド」とかクックパッドと絡めたタイトルを考えていたんですね。GWに有志でエンジニアたちに集まってもらいMTGをしたときに、「松浦さんが一番伝えたいことはなんですか?」と聞かれて、僕は「暮らしの基本を伝えたい」と答えたんです。すると、あるエンジニアが「メディアのタイトルもそれがいい!」と言ってくれて。すごいことを言ってくれたぞ、とその場で決めました。
佐々木 エンジニアの方からタイトルが挙がったんですね。
松浦 僕のほうがネットに対して身構えてしまって、ピュアじゃなくなっていたんです。GW初日にタイトルが決まってから、すべてがドライブしました。
佐々木 いまはどういう体制でやっているんですか?
松浦 僕と編集者が1名、デザイナーが1名。基本はこの3人で、現在専属のエンジニアを募集しています。エンジニアはいまは有志でお願いしているのですが、みなさんそれぞれ持ち場があるので。
佐々木 更新頻度はどれくらいですか?
松浦 ローンチの段階では20コンテンツを用意していますが、ほぼ1日に1本ずつの更新です。基本的に内製でやろうという方針で、編集者が週に2〜3本ずつテキストを書いて写真と動画を撮って、コンテンツを作ります。自分たちでやればコストもかかりませんから。
感情、行動をカテゴリーにする
松浦 カテゴリーは衣食住というジャンルではなく、「あこがれる」とか「まなぶ」とか感情や行動で分けています。今日の自分は何に接したいか、いまの自分の暮らしや気持ちに寄り添うものですね。
佐々木 それは、いまのコンテンツの動向に沿った先端の考え方ですよ。僕は最近よく、「いまやコンテンツは目的ではない、何かの課題解決のツールである」と言っています。悩みがあるとか、ごはんを食べたいとか、そういう日常の課題に対して、どうやってダイレクトに解決策を届けるか。だから、ジャンルではなくユーザーのライフステージを切り口に考える。その考え方と同じなので、とても驚きました。
松浦 記事はたとえば、「ありがとう」という感情カテゴリーのなかに「手紙を書くように」というタイトルでジャムの作り方に関する記事がある。タイトルは気分やムードを伝えるものにしています。ジャムは便に詰めるからラベルを書いて人にあげることで、ありがとうの気持ちを伝えることもできるんですね。
動画も料理の手順を説明するものではなく、料理の素敵なディティールを伝える。僕らはこの1分間の動画をジャムの「PV」と呼んでいます。
佐々木 料理の説明動画ではなく、料理のプロモーション。要するに料理の楽しさを伝える。たとえば日曜の朝起きて、今日は何をしようか、と思ったときにこのメディアを見てジャムを作りにチャレンジしたりする、と。
どうやってその発想に行き着いたんですか?
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