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「健全な対話促す」 イルカ漁映画制作の女性監督 文化的背景も描く
和歌山県太地町で行われているイルカの追い込み漁や捕鯨をテーマにしたドキュメンタリー映画の制作に取り組んでいる米国在住の佐々木芽生(めぐみ)監督(53)が29日、同県新宮市内で記者会見し、「太地は世界で起きているクジラ・イルカ論争の縮図。映画を通して健全な対話を促すきっかけになれば」と語った。
米国で2009年に公開された映画「ザ・コーヴ」で追い込み漁が批判される一方、日本からの反論が少ないことに疑問を抱き、10年から太地町で映画制作の取材と撮影を開始。反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」がイルカ漁を監視する様子や、それを避ける住民、警戒にあたる警察官らの姿を撮影し、漁船に乗り込んでハナゴンドウやスジイルカを湾内に追い込む様子もカメラに収めた。
佐々木監督は「日本がクジラをとり続ける文化的な背景など、反捕鯨団体の主張も含めて問題を俯瞰(ふかん)した形で見てもらえれば」と新作映画の狙いを説明した。
世界動物園水族館協会(WAZA)が日本動物園水族館協会(JAZA)への除名通告で、イルカの追い込み漁を「残酷」としたことについて「太地町がまた世界のやり玉に挙がっていることに驚く」と語った。その上で「取材で船に乗ったが、どの部分が残酷なのかはっきり分からなかった。食肉処理する際に血で湾が染まる映画『ザ・コーヴ』のシーンが、今の追い込み漁そのものとされているのでは」と指摘した。