韓国のベストセラー作家、申京淑(シン・ギョンスク)氏が、日本の小説家、三島由紀夫の作品を盗作したという疑惑が指摘され、韓国で議論を呼んでいる。申氏は当初、否定していたが、6月23日の韓国紙のインタビューで「今は私も、自分の記憶を信じられない」と事実上、盗作を認めた。
疑惑を提起したは6月16日にハフポスト韓国版に掲載された詩人イ・ウンジュン氏のブログ。申氏が1994年に発表した「伝説」という小説の一部分が、三島由紀夫の短編小説「憂国」に酷似していると指摘し「韓国文学の国際的な恥」と批判した。
2人とも健康な肉体の持ち主だった。彼らの夜は激烈だった。男は外から帰ってきて、土埃のついた顔を洗う暇も惜しく、急いで女を押し倒すのが毎度のことだった。最初の夜から2カ月後、女はすでに喜びを知る体になった。女の清逸な美しさの中に、官能は薫り高く豊かにしみこんだ。その熟れた歌を歌う女の声にも脂っこく染み入り、今や女が歌うのではなく、歌が女に吸われるようだった。女の変化を最も喜んだのはもちろん、男だった。
(申京淑「伝説」より。ハフポスト韓国版、イ・ウンジュン氏のブログから引用。2015/06/16 10:00)
三島が1961年に発表した短編「憂国」には、以下のようなくだりがある。
二人とも実に健康な若い肉体を持っていたから、その交情は激しく、夜ばかりか、演習のかえりの埃だらけの軍服を脱ぐ間ももどかしく、帰宅するなり中尉は新妻をその場に押し倒すことも一再でなかった。麗子もよくこれに応えた。最初の夜から一ト月をすぎるかすぎぬに、麗子は喜びを知り、中尉もそれを知って喜んだ。
(「憂国」p.266より。三島由紀夫『花ざかりの森・憂国』新潮文庫に収録)
これに対し、申氏の小説を出版した出版社は17日に「『金閣寺』以外は読んだことがなく『憂国』は知らない」とする申氏のコメントを発表し、盗作疑惑を全面的に否定していた。
しかし、他の複数の作品にも盗作があるとの疑惑が指摘され、韓国文壇のスキャンダルに発展していた。
騒ぎが大きくなると、申氏は6月23日付けで公開された韓国紙・京郷新聞のインタビューで、以下のように述べた。
「『憂国』と『伝説』を何度も読み比べた結果、盗作との問題提起は妥当だと思った。いくら過去の記憶をさかのぼっても『憂国』を読んだという記憶はないが、もはや私も自分の記憶を信じられない状況になった。出版社と協議して『伝説』を、収録した単行本から削除する。文学賞の審査委員などすべてを辞退し、自粛する時間を頂きたい。この問題を提起した文壇関係者を始め、私の周囲の方々、何より私の小説を読んだ多くの読者の方々に誠に申し訳ない」
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