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(作成 2015/06/23)
資料35 自家製飲料や発酵食品が関係した食中毒事例<近年の国内での食中毒>
最近、酵素飲料や発酵食品が話題になっています。これについては食品を素手で触れることを心配される方もおいでのようです。
そこで、厚労省の食中毒事件速報を中心に飲料や醗酵が関連する食中毒事例を集めて見たまし。
なお、一覧表作成するにあたっては全国食中毒事件録(平成8年〜平成25年)も参考にしました。(集計対象事件数=
30,623 件)
1 自家製飲料や食品を醗酵させた食品による食中毒
家庭での発酵食品として代表的な漬け物と味噌は除外して飲料を中心に探しました。自家製飲料による食中毒は家庭内での事故が多いのか、統計にはほとんど出てきません。発酵の失敗による事件を併せても食中毒事件総数3万件中10件しか探し出せませんでした。生卵を使う飲料は生卵の内部にサルモネラ菌属(サルモネラ・エンテロティディス)が存在することがあるので要注意です。生卵はサルモネラワクチン接種済の新鮮なものはリスクが低いです。
黄色ブドウ球菌による食中毒は作業者の手指の黄色ブドウ球菌をナン生地や蒸米に付着させ、暖かい状態で置いたため醗酵と同時に増殖させ、食品中に嘔吐毒素(エンテロトキシン)が出来てしまうと起こります。セレウス菌も黄色ブドウ球菌と似た性質を持っています。
加熱しない飲料は材料の果実等や手指にノロウイルスが付着していると簡単に発生します。手洗いと眼で見ても分からないでしょうが、清潔な材料を使うに限ります。洗えるものは洗ってみてください。75℃で1分以上加熱も有効です。
表1 自家製飲料や漬物を除く発酵食品が原因となった食中毒事例 | ||||||||
発生 | 都道府県 | 摂取場所 | 原因食品 | 病因物質 | 摂食者数 | 患者数 | 死者数 | 発生要因等 |
H09.08 | 石川県 | その他 | 自家製スタミナジュース | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 45 | 13 | 0 | サルモネラに汚染された卵を使用(推定) |
H10.03 | 京都府 | 事業場 | 自家製卵入りプロテインジュース | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 14 | 10 | 0 | サルモネラに汚染された卵を使用 |
H12.10 | 香川県 | 家庭 | 甘酒 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 93 | 25 | 0 | サルモネラの混入経路不明 |
H13.01 | 鳥取県 | 家庭 | 甘酒(自家製) | 黄色ブドウ球菌 | 4 | 4 | 0 | 蒸米で黄色ブドウ球菌が増殖と考えられる。 |
H13.01 | 東京都 | 飲食店 | ナン(インド料理) | 黄色ブドウ球菌 | 不明 | 5 | 0 | ナンの生地が黄色ブドウ球菌に汚染され、発酵中にエンテロトキシンが産生と推測 |
H13.11 | 奈良県 | 家庭 | 自家製ミックスジュース | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 7 | 6 | 0 | ミックスジュースに生卵が使用されており、卵又は卵殻からの二次汚染である。 |
H18.12 | 滋賀県 | 旅館 | 麹和えの麹 | 黄色ブドウ球菌 | 138 | 31 | 0 | 麹を製造工程で黄色ブドウ球菌が増殖、毒素を産成した。 |
H20.04 | 富山県 | 家庭 | ジギタリスジュース | ジギタリス | 1 | 1 | 0 | 植物性自然毒による事件。コンフリーと誤認か?コンフリーも有毒。 |
H22.06 | 東京都 | 学校 | 梅ジュース及び麦茶 | ノロウイルス | 93 | 57 | 0 | 製造過程でノロウイルスに汚染された |
H25.10 | 鹿児島県 | その他 | ミキ(米加工飲料) | セレウス菌 | 39 | 21 | 0 | 参考:「ミキ」は炊いた米にすりおろしたさつまいもを加えて発酵させた発酵飲料 |
2 食中毒の原因が食品の腐敗とされた食中毒事例
昔、食中毒の原因がよくわからなかった頃は腐敗中毒とかいったものがあったようですが、食中毒の原因がかなり究明されてきた近年ではお目にかかりません。3万件を探してそれらしいものが5件ありました。さらに5件からヒスタミンによる食中毒を除くと3件しかありません。つまり、食品が単に腐っただけでは、においや味の具合で食べれなくなり食中毒といわれる状態にはなりにくいといえます。
食品衛生監視員としての食中毒患者さんの調査経験からも、「鮮度が悪そうで心配しながら食べました」とうい方にはまず、お会いできません。通常「美味しく頂きました」という回答です。
表1、2の事例でも、牛乳の事例を除き、おそらくおかしいと思って食べた方はいないはずです。
いわゆる、腐敗によって引き起こされる食中毒にはおにぎりなどで起こる黄色ブドウ球菌やイズシが原因となったことがあった平成9年にいずしで発生したボツリヌス菌食中毒などのように食品中で毒素が産生されるものとヒスタミン食中毒等があります。しかし、これらは食べる方が腐敗しているとは認識できないケースもあり腐敗中毒とは言わないようです。
表2 発生原因が「腐敗」とされた食中毒事例 | ||||||||
発生年 | 都道府県 | 摂取場所 | 原因食品 | 病因物質 | 摂食者数 | 患者数 | 死者数 | 発生要因 |
H10.06 | 富山県 | 学校 | 牛乳 | その他(不明) | 推定5万人 | 781 | 0 | 腐敗・変敗していたと推定 |
H11.10 | 神奈川県 | 飲食店 | キハダマグロのソテー(10/26,飲食店の食事) | ヒスタミン | 10 | 8 | 0 | 原材料の「キハダマグロ」が腐敗細菌に汚染されヒスタミン産生 |
H11.11 | 和歌山県 | 家庭 | 鶏もも肉照り焼き(11/12、飲食店の食事) | その他の化学物質 | 5 | 2 | 0 | 温度管理が不十分だったため腐敗が進んだものと考えられる。 |
H12.03 | 岐阜県 | 飲食店 | マグロ照焼き | 化学物質 | 44 | 19 | 0 | 腐敗微生物によりヒスタミンを産生 |
H14.05 | 愛知県 | 家庭 | 焼肉用味付肉 | その他 | 5 | 5 | 0 | 腐敗・変敗した肉を焼いて喫食したことによると考えられる。 |
3 ヒスタミンが原因となった食中毒事例
ヒスタミン食中毒のことをアレルギー様食中毒とも言ってました。この食中毒は赤身の魚を保管中にヒスタミン産生菌が増殖し、ヒスタミンが増えたことにより起こる食中毒で、これは結構発生していますので平成24年から平成26年に発生した事例のみを表3に示しました。
調理前の食材からヒスタミンが検出されることから、調理施設に納入された時点でヒスタミンが生成されていたと考えられます。普通は、水揚げ・水産卸業者段階での生成が疑われます。ヒスタミンが多量に産生された食品は食べるとピリピリした感じがするケースもあるようです。
保育所での発生事例が多いのは幼児の方がヒスタミンに対して感受性が高いのも一因かも分かりません。
表3 ヒスタミンが原因となった食中毒事例 | |||||||
発生年 | 都道府県 | 摂取場所 | 原因食品 | 病因物質 | 摂食者数 | 患者数 | 死者数 |
H24.01 | 島根県 | 保育所 | いわしハンバーグ | ヒスタミン | 54 | 19 | 0 |
H24.06 | 東京都 | 飲食店 | 魚の天日干し | ヒスタミン | 4 | 3 | 0 |
H24.06 | 東京都 | 病院-その他 | まぐろのベーコンきのこソース | ヒスタミン | 18 | 13 | 0 |
H24.06 | 岡山県 | 家庭 | 購入したカジキ切り身 | ヒスタミン | 13 | 5 | 0 |
H24.06 | 岡山県 | 家庭 | 購入したカジキマグロの切り身 | ヒスタミン | 9 | 5 | 0 |
H24.07 | 東京都 | 飲食店 | マグロレアステーキ | ヒスタミン | 18 | 5 | 0 |
H24.07 | 千葉県 | 飲食店 | づけ丼 | ヒスタミン | 3 | 3 | 0 |
H24.07 | 福岡県 | 家庭 | いわし丸干し | ヒスタミン | 2 | 2 | 0 |
H24.10 | 石川県 | 保育所 | 魚の野菜蒸し(マカジキ) | ヒスタミン | 107 | 58 | 0 |
H25.03 | 島根県 | 保育所 | いわし団子の甘辛煮 | ヒスタミン | 112 | 18 | 0 |
H25.07 | 佐賀県 | 保育所 | 白身魚(カナヤマ)のホイル焼き | ヒスタミン | 133 | 12 | 0 |
H25.08 | 徳島県 | 飲食店 | マグロメンチカツ | ヒスタミン | 8 | 5 | 0 |
H25.09 | 宮崎県 | 保育所 | さんまの蒲焼 | ヒスタミン | 116 | 14 | 0 |
H25.09 | 東京都 | 保育所 | イワシのつみれ汁 | ヒスタミン | 307 | 109 | 0 |
H25.10 | 東京都 | 学校-寄宿舎 | 焼き魚(ブリ) | ヒスタミン | 不明 | 6 | 0 |
H25.11 | 大阪府 | 学校給食 | いわしつみれだんご汁 | ヒスタミン | 265 | 26 | 0 |
H26.03 | 大阪府 | 家庭 | かつおたたき | ヒスタミン | 2 | 2 | 0 |
H26.03 | 埼玉県 | 保育所 | イワシのつみれ汁 | ヒスタミン | 70 | 22 | 0 |
H26.07 | 宮城県 | 保育所 | さんまつみれ汁 | ヒスタミン | 79 | 24 | 0 |
H26.09 | 山形県 | 飲食店 | サバの塩焼き(推定) | ヒスタミン | 14 | 4 | 0 |
H26.09 | 宮城県 | 飲食店 | さんまハンバーグ | ヒスタミン | 26 | 4 | 0 |
H26.09 | 東京都 | 飲食店 | ブリの照り焼き | ヒスタミン | 6 | 2 | 0 |
H26.11 | 東京都 | 不明 | さば味噌漬 | ヒスタミン | 3 | 3 | 0 |
4 野菜の漬物による食中毒事例
野菜の漬物に関係する事例を表4にまとめました。時折、腸管出血性大腸菌による重大な食中毒が発生していることがわかります。腸管出血性大腸菌は原料野菜での汚染率が極端に少なく、検査で証明することは困難ですが、腸管出血性大腸菌の類縁である大腸菌が原料野菜からも検出されることから原料野菜に由来するということが自然だと思います。特に、牛糞を使用した野菜はリスクが高いと考えます。 乳酸醗酵が進めば大腸菌などは消滅するのですが、浅漬けでは大腸菌が優先的に増殖することがあるようで、運悪くその大腸菌が病原性のある大腸菌の場合食中毒が発生します。
平成14年を最後に腸炎ビブリオによる食中毒は発生していません。近年はノロウイルスの隆盛を反映して、ノロウイルスによる事例も発生しています。大腸菌による事故防止のためには、漬け桶や調味液の充填ラインなどで菌が増殖すると考えられますので、器具類の洗浄・乾燥が大事です。現在はまだ発生していませんが、リステリアにも眼を配る必要があると言えます。
表4 野菜の漬物が原因となった食中毒事例 | ||||||||
発生年 | 都道府県 | 摂取場所 | 原因食品 | 病因物質 | 摂食者数 | 患者数 | 死者数 | 発生要因 |
H08.10 | 宮城県 | 飲食店 | キュウリ等の漬け物(推定) | 腸炎ビブリオ | 80 | 14 | 0 | 調理従事者手指からの二次汚染 |
H08.11 | 宮城県 | 飲食店 | 白菜漬け(購入品) | 病原大腸菌 O148:H28 | 2102 | 26 | 0 | 従事者が保菌 |
H09.08 | 神奈川県 | 学校-その他 | キュウリの漬物 | 腸炎ビブリオ | 26 | 8 | 0 | 仕出し屋で魚介類に付着していた腸炎ビブリオに汚染された器具、手指による二次汚染推測 |
H10.08 | 茨城県 | 飲食店 | 漬物(キャベツ、きゅうり、人参の一夜漬け) | 腸炎ビブリオ | 17 | 16 | 0 | シンクを介しての腸炎ビブリオ汚染、及び盛付後の常温長時間放置 |
H10.09 | 山形県 | 家庭 | キュウリの浅漬け | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 6 | 6 | 0 | 家庭で製造時の原材料の汚染または手指からの二次汚染等が推測された |
H11.08 | 栃木県 | 事業場-食堂又は居室-事業所等 | なすの漬け物 | 腸炎ビブリオ | 8 | 4 | 0 | 魚介類販売業者の家庭で加工した漬物に腸炎ビブリオが付着増菌して発生した |
H11.08 | 茨城県 | 学校-その他 | きゅうりの漬け物(推定) | 腸炎ビブリオ | 50 | 26 | 0 | 合宿所の調理室できゅうりの漬物と赤魚の煮物を同時に調理したため,交差汚染が起きた |
H11.08 | 石川県 | 旅館 | キャベツの漬け物 | 腸炎ビブリオ | 100 | 41 | 0 | 活魚を調理場に持込む際に跳ねた水により、通路に置いてあった漬物桶内部が腸炎ビブリオに汚染された。長時間の室温放置 |
H12.06 | 埼玉県 | 老人ホーム | (カブの浅漬) | 腸管出血性大腸菌(VT産生) | 79 | 8 | 1 | 汚染経路は特定できず。野菜の洗浄など調理作業マニュアルは実行されていなかった |
H12.07 | 愛知県 | 飲食店 | 飲食店の漬物 | 腸炎ビブリオ | 3 | 3 | 0 | 魚介類に付着していた腸炎ビブリオに汚染された器具、手指による二次汚染推測 |
H13.08 | 青森県 | 事業所等 | 漬け物 | 腸炎ビブリオ | 90 | 37 | 0 | 調理器具からの2次汚染 |
H13.08 | 埼玉県 | 家庭(購入品) | (和風キムチ) | 腸管出血性大腸菌(VT産生) | 不明 | 26 | 0 | 発酵工程がなく、いわゆる浅漬法で、賞味期間が5〜14日間と比較的短い |
H14.06 | 福岡県 | 保育所 | 「キュウリの浅漬け」推定 | 腸管出血性大腸菌(VT産生) | 162 | 74 | 0 | 「キュウリの浅漬け」が原因と考えられた |
H14.09 | 新潟県 | 家庭 | 漬物(推定) | 腸炎ビブリオ | 4 | 1 | 0 | 魚を扱った器具の洗浄不良により、漬物用野菜を汚染し、漬け込み中に増殖したと推測 |
H17.08 | 千葉県 | その他 | 白菜キムチ漬 | 病原大腸菌O6H16 | 431 | 401 | 0 | |
H19.02 | 兵庫県 | 旅館 | かぶらの酢漬け等 | ノロウイルス | 20 | 14 | 0 | 調理従事者を介しての食品への二次汚染 |
H19.06 | 福井県 | 飲食店 | 漬物 | その他の病原大腸菌 | 39 | 7 | 0 | 原材料汚染、製造段階で菌が増殖等が考えられる |
H20.02 | 新潟県 | 家庭 | 漬物 | ノロウイルス | 15 | 14 | 0 | |
H20.02 | 新潟県 | 家庭 | 漬物 | ノロウイルス | 15 | 14 | 0 | 自家製の漬物 |
H23.02 | 東京都 | その他 | 白菜漬け(購入品) | ノロウイルス | 53 | 17 | 0 | |
H23.08 | 栃木県 | 病院給食 | ナスと大葉のもみ漬け | 腸管出血性大腸菌(VT産生) | 323 | 15 | 0 | 原材料の「大葉」からEHEC O145が検出され、「なすと大葉のもみ漬け」からはEHEC O157しか検出されなかった |
H24.08 | 北海道 | 飲食店 | 漬物(白菜きりづけ) | 腸管出血性大腸菌 | 不明 | 169 | 8 | 製造段階で菌が増殖 |
H25.04 | 北海道 | 飲食店 | 漬物(キムチ) | ノロウイルス | 不明 | 119 | 0 | 製造段階でノロウイルスに汚染された |
H26.07 | 静岡県 | 販売店 | 冷やしキュウリ | 腸管出血性大腸菌(VT産生) | 不明 | 510 | 0 | キュウリの浅漬。露店で提供。製造時に菌が増殖 |
5 納豆が関連した食中毒事例
日本の代表的な醗酵食品である納豆が関連した食中毒は多数報告されていますが、同時に使用した生卵による食中毒の事例がほとんどです。納豆と生卵の組み合わせはサルモネラを増殖させるようです。
ただし、鶏卵の内部に存在するサルモネラ・エンテリティディス
(S.enteritidis)の退潮とともに平成21年度以降は同菌による食中毒は発生していません。なお、サルモネラ O9群にはS.enteritidis が含まれます。
表5 発酵食品である納豆が関係した食中毒事件 | ||||||||
発生年 | 都道府県 | 摂取場所 | 原因食品 | 病因物質 | 摂食者数 | 患者数 | 死者数 | 発生要因 |
H09.05 | 鹿児島県 | 病院給食 | 卵、納豆とネギを混ぜた物 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 16 | 9 | 0 | |
H09.05 | 静岡県 | 事業場-その他 | 納豆の生卵和え | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 112 | 76 | 0 | 納豆の卵和えから原因菌が検出されたが、納豆、ねぎからは検出されず |
H09.06 | 青森県 | 事業場-その他 | 納豆卵 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 77 | 25 | 0 | |
H09.06 | 福岡県 | 飲食店 | 納豆巻・茶碗蒸し(推定) | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 86 | 47 | 0 | |
H09.06 | 長崎県 | 家庭 | 納豆ごはん(生卵とネギ入り) | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 4 | 4 | 0 | |
H09.07 | 青森県 | 事業場-その他 | 納豆およびゴマ和え(疑い) | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 139 | 60 | 0 | 検食の納豆およびゴマ和えより検出 |
H09.07 | 広島県 | 病院-その他 | 和え物(納豆・卵・ネギ) | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 191 | 45 | 0 | |
H09.10 | 福岡県 | 家庭 | 寿司(主に卵黄を使用した納豆巻き) | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 126 | 18 | 0 | |
H10.04 | 奈良県 | 家庭 | 生卵納豆ご飯が疑われる | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 2 | 2 | 0 | ひびが入り卵使用。残り9個の卵から同菌検出されず、他からの苦情等もなかった |
H10.05 | 大阪府 | 家庭 | 生卵入り納豆 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 4 | 3 | 0 | 納豆の喫食者は3名 |
H10.06 | 鹿児島県 | 旅館 | 納豆(生卵加) | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 20 | 14 | 0 | 生卵の殻表面からの2次汚染が考えられる |
H10.06 | 広島県 | 家庭 | 生卵かけ納豆 | サルモネラ O9群 | 1 | 1 | 0 | 納豆は賞味期限を過ぎていた |
H10.06 | 愛知県 | 病院給食 | オクラ納豆 | サルモネラ菌属 S.typhimurium | 159 | 22 | 0 | |
H10.07 | 広島県 | 家庭 | 納豆の生卵和え | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 3 | 3 | 0 | |
H10.07 | 奈良県 | 家庭 | 卵黄入り納豆 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 2 | 2 | 0 | 患者宅に残っていた納豆容器、卵殻からS.E検出 |
H10.08 | 神奈川県 | 事業場-寄宿舎 | 納豆卵 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 9 | 9 | 0 | |
H10.09 | 岡山市 | 旅館 | 納豆オクラ | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 119 | 71 | 0 | |
H10.09 | 千葉県 | 飲食店 | なっとろ(納豆・マグロトロ・鶏卵) | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 11 | 10 | 0 | ボウルに、数個の鶏卵を割卵し汚染が広がったと思われた |
H11.02 | 福岡県 | 病院給食 | にら納豆(卵入り) | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 302 | 130 | 0 | 高濃度に汚染した鶏卵と推察 |
H11.08 | 京都府 | 家庭 | 納豆生卵かけ | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 4 | 4 | 0 | |
H11.09 | 大阪府 | 家庭 | 生卵入り納豆ごはん | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 3 | 3 | 0 | |
H11.09 | 埼玉県 | 事業所給食 | マグロ(まぐろ納豆丼) | 細菌-腸炎ビブリオ | 43 | 20 | 0 | マグロの不適正な取り扱いにより菌が増殖した |
H12.06 | 山梨県 | 家庭 | 生卵入り納豆 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 5 | 5 | 0 | 家庭内での生卵の分割喫食 |
H12.06 | 兵庫県 | 家庭 | 納豆卵に使用した卵 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 2 | 2 | 0 | 生卵の喫食により発生と考えられる |
H12.06 | 大阪府 | 家庭 | 生卵入り納豆 | サルモネラ O9群 | 5 | 4 | 0 | 生卵と納豆を1つのボウルで混ぜた |
H12.06 | 富山県 | 家庭 | 生卵入り納豆 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 5 | 5 | 0 | 汚染された鶏卵の生食 |
H12.07 | 大阪府 | 家庭 | 生卵納豆ごはん | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 3 | 3 | 0 | 卵が当該菌に汚染されていたと推察 |
H12.09 | 長崎県 | 家庭 | 生卵かけ納豆 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 3 | 3 | 0 | 原因食品が菌に汚染されていたと思われるが、特定には至らなかった |
H12.09 | 秋田県 | 家庭 | 生卵を納豆と混ぜ合わせ | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 6 | 5 | 0 | 生卵を納豆と混ぜ合わせ室温に放置後、摂食 |
H13.05 | 京都府 | 学校-寄宿舎 | イカ納豆 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 121 | 80 | 0 | |
H13.06 | 大阪府 | 家庭 | 共通食は卵納豆のみ | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 3 | 3 | 0 | 家族で1ケの卵を納豆に混ぜ3人で分け喫食し発症。他に苦情無し |
H13.06 | 広島県 | 飲食店 | 生卵入り納豆 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 8 | 8 | 0 | 鶏卵が菌に汚染されていたと推察 |
H14.04 | 神奈川県 | 家庭 | 卵納豆(4・13提供) | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 4 | 3 | 0 | |
H14.07 | 兵庫県 | 事業所給食 | オクラ納豆卵黄入り | サルモネラ O9群 | 39 | 34 | 0 | 患者便と食品からサルモネラ属菌が検出された |
H14.07 | 宮崎県 | 家庭 | 生卵をからめた納豆 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 4 | 4 | 0 | |
H14.08 | 北海道 | 保育所 | 炒め納豆 | サルモネラ・ハイデルバーグ | 163 | 111 | 0 | 「炒め納豆」から同型のサルモネラを検出した |
H15.07 | 熊本県 | 事業所給食 | 納豆和え | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 654 | 170 | 0 | 器具・容器の洗浄消毒が不十分であり、二次汚染の可能性あり |
H15.08 | 大阪府 | 老人ホーム | 生卵あえ納豆 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 39 | 17 | 0 | 卵を容器にまとめて割卵したことが、汚染を拡大 |
H15.10 | 北海道 | 家庭 | 納豆卵(推定) | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 2 | 2 | 0 | 納豆に生卵を混ぜ長時間室温放置後喫食 |
H16.12 | 岡山県 | 事業場-その他 | 納豆卵和え | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 940 | 30 | 0 | |
H18.09 | 鹿児島県 | 家庭 | 生卵かけ納豆 | サルモネラ菌属 S.enteritidis | 5 | 4 | 0 | |
H20.08 | 愛知県 | 家庭 | 和え物(納豆・オクラ・ねぎ・生卵) | サルモネラ O9群 | 3 | 3 | 0 | |
H21.07 | 大分県 | 飲食店 | 軍艦巻き:月見納豆 | サルモネラ・ティフィムリウム | 76 | 35 | 0 | |
H23.08 | 宮崎県 | 家庭 | 生卵入りオクラ納豆 | サルモネラ菌属 S.Bareilly | 4 | 3 | 1 |
6 その他の醗酵食品が原因となった食中毒事例
近年、納豆が直接の原因となったものは発見できませんでした。日本酒は容器の転用や洗浄消毒中で、中に薬品や洗剤が入っているものを提供する事例が多いようです。醤油はイクラの醤油漬けで大きな事件がおきました。
味噌や梅干しはカビが生えてダメになり廃棄されるケースは有ると思いますが、食中毒に結びついたものは発見できませんでした。
表6 味噌、醤油が関連した食中毒事件 | ||||||||
発生年 | 都道府県 | 摂取場所 | 原因食品 | 病因物質 | 摂食者数 | 患者数 | 死者数 | 発生要因 |
H10.08 | 岩手県 | 旅館 | 日本酒と誤認 | 塩化ベンザルコニウム希釈液(0.6%) | 11 | 11 | 0 | 消毒液を一升瓶に保管していたことから、従業員が日本酒と勘違いした |
H10.05 | 北海道 | 飲食店 | いくら醤油漬(購入品) | 腸管出血性大腸菌(VT産生) | 不明 | 49 | 0 | 醤油漬けの製造過程で汚染 |
H16.03 | 東京都 | 飲食店 | 酒ダレ | 廃油処理剤(非イオン系界面活性剤) | 2 | 2 | 0 | 従業員による調味料(タレ)の調製時に混入 |
H20.11 | 大阪市 | 飲食店 | ゆず梅酒 | 弱酸性合成洗剤 | 2 | 2 | 0 | |
H24.07 | 新潟市 | 飲食店 | 日本酒と誤認 | アルカリ性食器洗浄用液体洗剤 | 2 | 2 | 0 | 日本酒に誤ってアルカリ性洗剤を混入し,提供した。 |
H24.10 | 長野県 | 飲食店 | 日本酒と誤認 | 殺菌・漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム) | 5 | 5 | 0 | 殺菌・漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を日本酒と誤って提供 |
H26.01 | 新潟県 | 購入品 | 発泡酒と誤認 | 除菌剤 | 1 | 1 | 0 | 発泡酒瓶に除菌剤が充てんされたもの |
資料1 食中毒事件一覧速報 - 厚生労働省 -
資料2 漬物による腸管出血性大腸菌O157食中毒と課題について 財団法人東京顕微鏡院食と環境の科学センター伊藤
武 2012年11月2日
資料3 花火大会関連腸管出血性大腸菌O157 VT1&2集団発生事例−静岡市 (IASR
Vol. 36 p. 80-81: 2015年5月号)
資料4 白菜浅漬による腸管出血性大腸菌O157食中毒事例について−札幌市 (IASR
Vol. 34 p. 126: 2013年5月号)
資料5 腸管出血性大腸菌O157、O145の混合感染が認められた食中毒事例―栃木県
(IASR Vol. 33 p. 122-123: 2012年5月号)
資料6 「キュウリの浅漬け」が原因と考えられた保育園における腸管出血性大腸菌O157集団感染事例−福岡市(IRSA
Vol.24 p 132-133)
資料7 尾崎延芳ら:「キュウリの淺漬」が原因と推定された腸管出血性大腸菌O157の集団感染例,福岡市保健環境研究所報、28,120-124
2002
資料8 「和風キムチ」を原因食品とする腸管出血性大腸菌O157集団感染事例−埼玉県
(Infectious Diseases Weekly Report Japan
2001年 第40週(10月1日〜10月7日):通巻第3巻
第40号
資料9 尾関由姫恵ら:市販和風キムチに起因する腸管出血性大腸菌O157:H7Diffuse Outbreak事例、感染症誌,77,493-498,2003
資料10 和風キムチによるEHEC食中毒事例−東京都 (IASR
Vol.23 p 139-141)
資料11 イクラ醤油漬の腸管出血性大腸菌O157汚染に関する調査−北海道 (IASR
Vol.19 No.10 October 1998)
参考 おかわり 奄美の「ミキ」飲んでみました
参考 東京都福祉保健局 食品衛生の窓
備考:一覧表にする際、食中毒事件一覧速報には原因食品が空白になっている事例でも他の資料から原因食品や発生要因が判明している場合、書き加えた事例や簡略にするために表現を一部変えたものがあります。ご了承ください。