首相補佐官が10代の女子に論破され、逃走するという「事件」が起きた。

 自民党・礒崎陽輔首相補佐官が6月9日、集団的自衛権行使の必要性をツイッター上で力説していたところ、「ほなみ」さんという18歳女子にことごとく反論され、「集団的自衛権と個別的自衛権の違いすら分かっていない」と論破されたのである。

 最終的に礒崎氏は「ほなみ」さんをブロックして幕引きをはかったが、首相補佐官が10代の女子に論破されたことはたちまち話題となった。ふたりのやりとりのまとめは約43万viewを記録している(6月21日時点)。

 しかし、礒崎陽輔氏といえば、国家安全保障を担当する首相補佐官であるだけでなく、東大法学部卒の法学士で、自民党の憲法改正推進本部・事務局長まで務める人物である。常識的に考えれば、10代の女子に言い負かされるとは少々信じがたい。ネットでは「10代女子というのは虚偽ではないか」といった声も上がった。

 10代女子・「ほなみ」は実在するのか。実在するとすればどんな人物なのか。6月19日、「ほなみ」さんがIWJの特別番組に電話出演し、思いを語った。

【IWJ特別番組より ※ほなみさんへの電話インタビュー部分のみ抜き出し】

  • 日時 2015年6月19日(金)17:30〜
  • 場所 IWJ事務所(東京・六本木)

「戦争を火事に例えることがおかしい。同類でなければ比喩にならない」

岩上「『ほなみ』さんという方をご存知でしょうか。礒崎陽輔首相補佐官とツイッター上でバトルした子なんです。もしもし?」

ほなみさん「もしもし」

岩上「若い人が政治参加をする、あるいは、この戦争立法や集団的自衛権など、戦争詐欺師みたいな話に抗議する、ということをテーマに、今、話をしてるんですが、ほなみさんは、礒崎陽輔首相補佐官が、ツイッターで戦争を火事に例えて、真っ向から噛み付いて、異論を唱えたでしょ?」

ほなみ「そうです。戦争を火事に例えることが、まずおかしいし。例え話って、比喩から持ってくるじゃないですか。比喩は、同類のものじゃないと、比喩にならないじゃないですか。

 戦争と火事を同列に並べてるところがおかしいんじゃないか、って指摘をしたら、『例え話の意味もわかっていないのか』みたいなことを言われて、そこからちょっとヒートアップしちゃったんですけど」

岩上「戦争と火事が例え話としてイコールにはならないと思った理由はなんでしょう?」

ほなみ「戦争は人を殺しあって、敵がいる。どっちからみても、敵は敵じゃないですか。消火活動じゃなくて、人同士が殺し合うじゃないですか。火事は敵なんていなくて、みんなで協力して消火活動して…」

岩上「災害だもんね」

ほなみ「火が消えれば(終わり)、みたいな感じで、攻撃してくる相手もいないじゃないですか」

岩上「いない。みんなが同じ方向を向いてるよね。利害が対立してるわけじゃない。火事と戦っても、火事から攻撃されるってことはないもんね」

ほなみ「そうです」

岩上「礒崎さんは災害と戦争をうまく混同して、話をしているってことだよね?」

ほなみ「はい。そうですね」

岩上「なるほどね。鋭いところに気が付きましたね」

ほなみ「でも、普通に考えて、そうなんじゃないかと私は思います」

米国の戦争への加担は「全然、日本を守ってるわけでもない」

岩上「ほなみさんにボロボロに論破された礒崎陽輔首相補佐官は、『集団的自衛権とは、隣の家で出火して、自主防災組織が消防車を呼び、初期消火に努めている中、「うちにはまだ延焼していないので、後ろから応援します。」と言って消火活動に加わらないで、我が家を本当に守れるのかという課題なのです』と言っている。

 それに対して、ほなみさん『バカをさらけ出して恥ずかしくないんですか。分かりやすく解説じゃなくて都合良く解説お疲れ様です』…しんらつ~(笑)」

岩上「『その説明全部論破されて終わりますよ。集団的自衛権と個別的自衛権の違いを勉強してください。議論はそこからです』って、書いているんだけど、ほなみさんにとって、集団的自衛権と個別的自衛権っていうのは別のものだっていうのをどんなふうに考えていますか?」

ほなみ「今、解釈上、個別的自衛権が日本で認められていて、『他国が日本に攻めてきたら戦ってもいいよ』みたいな感じになってるけど、他国の、例えば、アメリカがどこかと戦争して、日本がそこに参戦するっていうのは、全然、日本を守っているわけでもなく」

岩上「そうだね。リスクを増やすだけだよね」

ほなみ「そうですね」

岩上「いたずらに作り出してる」

ほなみ「ただ単に加担することになるじゃないですか、集団的自衛権って。今の憲法上でも認められてないし、嫌だなってすごい思う」

岩上「なるほど。火事と戦争の例えっていうのがそもそもおかしいよねっていうふうな話ですけど、火事と戦争の例えを百歩譲って、同じようなものと考えたとしても、それでも問題あるよね、っていうことをちょっとおっしゃっていますね」

ほなみ「あ、そうですね。まあ、同じものとして例えたら、戦争イコール火事だから、参加をしたら、もっと炎上して終わるだけじゃないか、と思いました」

岩上「火事と戦争が同じだったとしたら、火事を消さなきゃいけないわけだから、和平努力をすることが大事。なのに、戦争に参加して、鉄砲を撃って、爆弾炸裂させたら、火事が増えるだけじゃないか、と」

ほなみ「そうです。全然、守ってもないし、消火もしてないし」

岩上「消火もしてないって。鋭いね」

ほなみ「炎上してますよね」

「『日本を守るための戦い』が、いつ始まるのかっていうのが単純に疑問」

岩上「じゃあ、ここでもう一つ。『個別的自衛権は、我が国が直接武力攻撃を受けないと、行使できません。だから、それまで、他国が我が国を守るために戦ってくれている中で、指をくわえて見ていていいのですかという話です。もう少し上品な言葉を使いましょうね』…と、磯崎さんは言っているわけですね。

岩上「これはもう前提として、アメリカは日本を守ってくれているという、パパはとっても、なんていうのかな、家族を守ってくれているのよ、みたいな話なんだけれども。

 それに対してほなみさんは、『日本を守る戦い? は? 大丈夫かこいつは』――『こいつは』という言葉は、ちょっと悪いかもしれないけど――『日本を守る戦争はいつ始まるのでしょうか。アメリカに言われるがまま集団的自衛権行使容認しよーとしている今の日本で本当に日本が守れるとでも?笑バカすぎてつらい。こんなんが政治家でいいのか』。

岩上「磯崎さん、かなり怒ったと思うんですけど、言いたかったのはどういうことですか?」

ほなみ「言葉通り、『日本を守るための戦い』が、いつ始まるのかっていうのが単純に疑問だし、日本に攻撃したいと思ったら、他国に攻撃するんじゃなくて、本当に日本に攻撃してくるじゃないですか」

岩上「うまいこと言うね。そのとおりだね。日本を攻撃する。

 集団的自衛権でホルムズ海峡に行けって言われているわけだけれども、ということは、イランと戦争するって話だよね。イランをやっつけることで、アメリカ、あるいはイスラエルが日本防衛の戦いをしていくことになるのかって言ったら、全然、説明がつかないよね」

ほなみ「そうですね。全然、よく分からない」
(取材・岩上安身 記事・原佑介)

立憲主義を知らない礒崎氏に「びっくりですね。冗談なのかなっていう」

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