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 「衰退する日本」に対し、上から目線で接するようになった韓国。だが、最近は何やら自信を失った様子だ。韓国人の揺れる心を、神戸大学大学院の木村幹教授が読み解く(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

オバマとの約束をドタキャン

韓国は中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)で大騒ぎです。

鈴置:2014年4月に起きた旅客船「セウォル号」沈没以来の騒ぎになりました。朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は6月中旬からの訪米を直前になって中止。オバマ(Barack H. Obama)大統領との会談も無期延期しました。

 訪米中止に対して当初は「『MERS』ぐらいで取り止めるとは国の格を落とす」との批判も出ました。大統領がいなければ流行病1つ処理できない行政能力の低い国と思われる、との意見です。

 でも、今となっては誰もそんな批判はしません。むしろ、メディアには「大統領が先頭に立って『MERS』と戦う姿を見せ、国民を安心させろ」という声が満ち溢れています。

 発生初期に患者の管理に失敗したうえ、「MERS」拡散の源となった病院に閉鎖を命じなかった政府は、厳しい批判を浴びています。

 患者が発生し始めた5月27日ごろ、教育部が全国の学校に対し「(『MERS』の病原菌が潜みかねない)ラクダの生肉を食べないよう」指示しました。「MONEY TODAY」というネットメディアが6月2日に配信した記事(韓国語)で報じました。

 政府のこのピンボケぶりは格好の攻撃材料となりました。もちろん韓国人にはラクダの肉を食べる習慣はありません。そもそも韓国でラクダの肉は売っていません。

 新聞各紙は連日「MERS」を社説で取り上げ「無能で無責任な公務員」と「リーダーシップを発揮しない朴槿恵政権」をなじっています。

 国民が政府に不信感を抱くのも無理はありません。政府は毎日「今日が峠」と発表、事態は改善すると示唆します。でも、感染者と死亡者は日増しに増えているのです。

任期半ばでレームダック

木村幹(きむら・かん)
神戸大学大学院・国際協力研究科教授、法学博士(京都大学)。1966年大阪府生まれ、京都大学大学院法学研究科博士前期課程修了。専攻は比較政治学、朝鮮半島地域研究。政治的指導者の人物像や時代状況から韓国という国と韓国人を読み解いて見せる。受賞作は『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(ミネルヴァ書房、第13回アジア・太平洋賞特別賞受賞)と『韓国における「権威主義的」体制の成立』(同、第25回サントリー学芸賞受賞)。一般向け書籍に『朝鮮半島をどう見るか』(集英社新書)、『韓国現代史』(中公新書)がある。最新作の『日韓歴史認識問題とは何か』(ミネルヴァ書房)で第16回 読売・吉野作造賞を受賞した。ホームページはこちら

木村:朴槿恵大統領の指導力はますます低下するでしょう。今年1月の青瓦台(大統領府)の人事交代で、大統領に直言できる人は皆無になっていますしね。

 今後、与党が朴槿恵政権を「沈む舟」と見なせば、野党と一緒になって――野党以上に政権を叩くと思います。総選挙は来年です。国会議員は政権と一心同体と見なされて落選したくはないのです。

 そうなれば朴槿恵政権は任期を半分残して完全なレームダックと化します。韓国の歴代政権がしばしば末期になって経験することですけれど。

 経済的にも「セウォル号」事件よりも打撃が大きくなる可能性があります。「MERS」で外国からの観光客が減っています。金浦空港も観光地もガラガラ。外国人の姿が消えた、と話題になっています。もちろん「セウォル号」ではそんなことはありませんでした。

 とは言え、経済規模が大きくなった韓国ですから、海外からの観光客が多少減ったくらいでは影響は限定的です。

 より重要なのは内需へのダメージです。「セウォル号」でも亡くなった若者に哀悼の意を表すため、外食や行楽客がグンと減りました。経済界はその再発を恐れています。

 「MERS」でも恐怖感から外出を避ける人が増えました。さらに「MERS」は、韓国人が抱く将来に対する漠然とした不透明感を加速しました。ただでさえ冷え込んでいた消費を、より冷やすのは確実です。


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