ある社員が1週間に何度か、午前3時に会社のコンピューターシステムにアクセスし始めたとしよう。これは社員が悪事をもくろんでいる兆候なのか。あるいは眠れずに少し仕事をしようとしただけなのか。
こうした疑問に答えるため、「心理言語学」という科学に頼る企業が出てきている。これは人々の言語の使い方や、使い方の変化を捉えるアルゴリズム(演算法)を用いた科学のことだ。
セキュリティー会社、ストローズ・フリードバーグの共同創設者エド・ストローズ氏によると、心理言語学を用いることで企業は従業員の行動や気分の変化を追跡し、好ましくない行動を取っている社員を特定することができる。あるいは、暴力やスパイ活動などの悪事につながる道をたどっている可能性のある社員を見分けることもできるという。
同社は先週、「スカウト」と呼ばれる技術を用いた製品を発表した。同社によると、これを利用することで企業は従業員が使う言葉や行動をより戦略的かつ正確に精査し、顕在化した、あるいは潜在的な問題を特定することができるという。
ストローズ氏は米連邦捜査局(FBI)の特別エージェントとして働いていた1980年代に心理言語学に初めて目を向けるようになった。同氏によると、電子媒体を通じたコミュニケーションが増え、顔と顔を向き合わせる機会が減少する中、かつてはボディーランゲージや表情などで感じ取ることのできたシグナルを摘み取る方法を見つけ出す必要性が高まったという。
ストローズ・フリードバーグは15年前に設立され、最初は「ウオーム・タッチ」と呼ばれていたが後に「スカウト」と名称を変更した技術開発を進めてきた。この技術は調査支援や監視ツールとして、これまでに100件以上のケースで利用されてきた。同社は上場しておらず、スカウトがもたらすと見込まれる収益を明かさなかった。また、この技術の利用者についても公表しなかった。
同社でスカウト事業部門を率いるスコット・ウエーバー氏によると、この技術には膨大な量の電子メールやソーシャルメディア(SNS)上でのコミュニケーションを監視するフィルターが用いられており、不満や怒り、絶望、犯罪の意図などを示唆するキーワードがこのフィルターに引っかかる。こうした情報を個人ファイル、ITおよびセキュリティー、上司や同僚からの意見とつなぎ合わせ、どういった行動が取られるかが決められるという。
ウエーバー氏は「アルゴリズムと(1万以上の単語や句から成る)収集データの組み合わせを通じて個人の言語を観察し、この人物を60の心理学的分類の中で分析する。そして、長い時間をかけてこの人物同士を比較し、同僚とも比較する」と述べた。
同氏によると、ある社員が2年間モデルとなれば、社員同士の電子媒体上でのコミュニケーションを実質的に監視する理由はなくなる。ただ、この人物が監視された行動分類を一つかそれ以上超えるようになると、「監視する理由が出てくるかもしれない」という。
ウエーバー氏によると、利用された言語を長い間追跡すれば、このシステムで皮肉屋と大げさなコミュニケーションを取る人物とを見分けることができる。また、問題を抱えているという本当のサインを出している人物を見つけ出すこともできるという。