(英エコノミスト誌 2015年6月20日号)

ギリシャとユーロ圏は、お互いを痛めつける関係から抜け出せないでいる。

ユーロ圏財相会合、ギリシャ問題で合意なし 22日に緊急首脳会談へ

下手をすれば、ギリシャはユーロ圏のみならず、EUからの離脱も余儀なくされる恐れがある〔AFPBB News

 どんなものであれ、関係が壊れるのを目にするのは、決して愉快ではない。ギリシャのアレクシス・チプラス首相は、自国に屈辱を与えようとしていると債権団を非難した。同首相はさらに、ギリシャの苦難に関して「犯罪的な責任」があると、国際通貨基金(IMF)を責めたこともあった。

 一方、ユーロ圏の有力政治家たちは、今後数日以内に救済資金の拠出で合意がまとまらなければ、ギリシャのデフォルト(債務不履行)とユーロ離脱(いわゆる「Grexit=グレグジット」)が現実味を帯びると公言している。

 事態が切迫しているのは、IMFへの15億ユーロの返済期限が6月30日に迫っているものの、ギリシャには返済する余裕がないと見られているうえに、欧州によるギリシャの救済プログラムも同日で失効することになっているからだ。

 こうした状況の中で、ユーロ圏の名物と化した土壇場での交渉が始まっている。本誌(英エコノミスト)が印刷に回された直後には、ルクセンブルクで財務相を集めた会合が開かれる予定になっており、週末に首脳会議が開かれる可能性もあった*1

 6月25~26日には欧州連合(EU)首脳会議が予定されている。結局はチプラス首相とドイツのアンゲラ・メルケル首相との1対1の会談に行き着くかもしれない。まだ合意の可能性はあるが、双方は互いに嫌悪感を抱くようになっている。これが結婚だとしたら、弁護士が走りまわっているところだ。

 ギリシャとユーロ圏が離婚すれば、すべての関係者にとって大惨事となるだろう。問題は、ギリシャとユーロ圏が両者の関係の条件を変えない限り、このまま一緒にいる方が離婚よりもはるかに良いとは言えない点だ。

極左政権の下、退場を迫られるギリシャ

 その理由を知るために、まずはデフォルトとユーロ離脱がもたらす結果を考えてみよう。断続的に議論が繰り返された腹立たしい5年間を経て、そうした展望を歓迎するようになった人もいる。だが、そう考える人々は間違っている。

 ギリシャにとって、デフォルトで得られるものはごくわずかな一方、代償は極めて大きくなる恐れがある。確かにデフォルトすれば、ギリシャは国内総生産(GDP)比180%近くに上る3170億ユーロの債務から逃れられる。

 だが、ギリシャにとって、その価値は見かけよりも低い。債務は多額だが、金利は格安で、数十年をかけた返済が可能だ。2020年初頭までの利子の支払い額は、年間でGDP比3%程度にすぎない。その程度なら、ギリシャでさえ何とかなる。

 ユーロからの離脱にも、あまり利点はない。理論上は、新たな通貨ドラクマと独自の中央銀行があれば、ギリシャは通貨を切り下げ、競争力を手に入れられるはずだ。だが、ギリシャの貿易額はささやかなものだ。しかも、すでに名目賃金は16%低下しているが、輸出が急増する気配はない。

*1=ユーロ圏の緊急首脳会議は22日に召集された