【ソウル=加藤宏一】韓国銀行(中央銀行)は11日、定例の金融通貨委員会を開き、政策金利を0.25%引き下げ、1.5%にすることを決め、即日実施した。過去最低の1.75%からさらに引き下げた。ウォン高・円安で自動車などの輸出が振るわず、生産が落ち込む中、足元では中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)の感染拡大から消費にも下押し圧力がかかっている。追加利下げを通じて消費を刺激する。
利下げは3月以来、3カ月ぶり。李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は同日の記者会見で「MERSの流行で(景気の)不確実性が増しており、利下げが消費の萎縮を緩和することに役立つと判断した」と理由を説明した。
韓国の産業通商資源省によると、5月の輸出額(速報)は原油安による石油製品の価格下落に加え、中国やロシアの景気低迷などから前年同月比10.9%減と2015年に入り、最大の下げ幅を記録した。また、統計庁によると、鉱工業生産や設備投資も4月まで2カ月連続で前月実績を下回っている。
不動産市況の回復などで消費はやや回復の兆しもみられたが、MERSの感染拡大が続く中で旅行や外食、レジャーなどのサービス消費の落ち込みが鮮明になっている。消費者物価指数は5月まで6カ月連続で前年同月比の上昇率が0%台にとどまっていた。
経済協力開発機構(OECD)は6月に入り、15年の韓国の経済成長率の見通しについて前年比3.0%増と昨年11月の予想から0.8ポイント下方修正している。韓銀の予想に比べても0.1ポイント低い水準で、景気の先行きに悲観的な見方が広がっていた。
韓国では政府の不動産融資の借り入れ規制の緩和や韓銀の断続的な利下げで住宅購入の動きが拡大している。一方で家計負債も拡大しており、3月末の同負債額は1099兆ウォン(約120兆円)で昨年12月末に比べて1.1%増えた。今回の利下げで負債の増加ペースが速まる可能性もある。
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