キューバでも進む野球離れ、世界に目を向ける若者
ウォール・ストリート・ジャーナル 6月11日(木)10時7分配信
【ハバナ】キューバの人々は70年にわたり、野球を観戦するためにエスタディオ・ラティーノアメリカーノ球場のゲートをくぐってきた。これは5万5000人の野球ファンを収容できる同国最大の球場で、周囲には狭い道にパステル調の民家が立ち並ぶ。ただ、最近は本塁側のゲートの一つが「即席のサッカーゴール」という別の目的に使われている。
球場が使われない平日の夕方はたいてい、子どもたちが閉じられたゲート前の道ばたに集まり、ハーフフィールドのミニサッカーに興じる。大半はスニーカーを履いているが、サンダルや素足の子もいる。全員が長方形のゲートを目指し、ぼろぼろのボールが金属製の冊に当たればゴールだ。
ルンバや葉巻と共に野球が文化の一部となっているキューバで、サッカーの存在は単にゲートにボールを蹴り込む以上のものだ。ここでは若者の選択肢の一つとしてサッカーが浮上しており、野球の未来が危ぶまれるという世界的な現象を浮き彫りにする世代交代が起こっている。
現在でも国民の野球熱は残っている。ただ、公共スペースやテレビで、いつでもどこでも見られた野球の存在が、じわじわとサッカーに押されているのだ。これはたった5年前でも想像できなかったことだ。ハバナ全域では、簡単なサッカーの試合を楽しむ人々が道路や歩道、公園にあふれている。これらは昔から草野球でほぼ独占されていた場所だ。自動車やタクシーはスペイン1部リーグのFCバルセロナなど、欧州クラブのステッカーで装飾されている。
オールド・ハバナの葉巻販売店にいた38歳のジョエル・チャコンさんは「そもそもキューバの人々は野球ファンだ」とした上で、「30歳以下なら野球に関心がない世代もある」と話した。
毎日ファンが集まり、大声で野球話に興じることで有名なパルケ・セントラルでさえ、サッカーの話題が聞こえるようになってきた。ある日の午後、数十人の男性が2つのグループに分かれた。一方のグループでは野球の話が始まり、もう一方はUEFAチャンピオンズリーグ決勝から母国の粗末なサッカー場に至るまで、さまざまなサッカーの話題で盛り上がっていた。
両グループの間に立っていたミシェル・エルナンデスさん(37)は「年配の世代は伝統的な野球を好むが、若者はサッカーを好む」と語った。
変化の程度を測るのは困難だ。スポーツやレクリエーションを担当する政府当局の関係者はコメントを控えた。ただ、キューバの熱烈な野球ファンでさえ、野球が若者を引きつける伝統的な力を失ったことを否定しなかった。これはキューバに限定された問題ではなく、米国でも同様のことが起こっているのだ。
日本では伝統的に野球が盛んだが、中学生の野球チームに所属する少年の数は2009年から14年までに28%減少したことが、公式統計で明らかになった。アマチュア野球の関係者によると、野球は若者が気軽に参加できるスポーツという地位をサッカーに奪われている。野球ファンの高齢化が進む中、プロ野球界では若者に対し積極的に野球をアピールしている。
外側から眺めてみると、キューバでは野球ブームが起こっているように見える。米大リーグ(MLB)の各球団は2012年以降、自由契約となったキューバ選手に4億ドル以上を費やしてきた。昨年のオールスターにはキューバ生まれの選手が5人出場した。これは40年ぶりとなる数だ。今年のシーズンが始まった時、選手名簿には18人のキューバ人選手が登録され、国別では米国人以外で3番目に多い数となった。米国とキューバが国交正常化を目指す中、MLBは2016年春にもキューバで練習試合ができると期待している。
半面、キューバから有名なサッカー選手はほとんど輩出されていない。同国の代表チームは1938年以降、サッカーワールドカップ(W杯)から遠ざかっている。
キューバにおける野球の歴史は、1860年代に米国人の船乗りがもたらしたことで始まった。フィデル・カストロ前議長は野球の熱烈なファンだ。過去1世紀の大半、キューバの若者は考え得るあらゆる方法で野球を楽しんだ。真剣にプレーする選手のために国営のベースボールアカデミー網が敷かれているが、これ以外では近くで楽しめるスポーツとしてさまざまな形態が取られた。
キューバで50年近く野球を教えている81歳の元投手は、他の多くのキューバ人と同様、野球が永遠に国技と呼べる存在であり続けると信じている。同氏はサッカーについて、有名選手に熱を上げているだけで定着することはないと切り捨てた。子どもたちは欧州の選手と同じジャージを身につけているが、その選手のポジションすら言えないのだという。
ただ、キューバの若者の一部にとって、こうした見方は的外れだ。彼らにとって、野球は薄れていく自国のナショナリズムの象徴で、サッカーはより広い世界の一部になったと感じることができる手段なのだ。
By BRIAN COSTA
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