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 「日経ビジネス」は6月1日号で「日野原・稲盛 魂の提言 日本の医療を救え」と題する特集を掲載。その中で、独自に作成した「病院経営力ランキング」も公表した。現在、日本の病院の7割が赤字だ。地域の病院を維持していくために必要なのは、名医でも最新の医療設備でもなく「経営力」だと本誌は考える。経営が健全でなければ、良質な医療サービスの提供は続かず、国の医療保険財政も一層ひっ迫の度を増すことになる。医療という「命のインフラ」を守るうえで、医療を提供する側、受ける側ともに病院の経営力に目を向ける必要がある。

日本の病院の7割が赤字だ。「命のインフラ」とも言える医療を維持していくために、病院にも「経営力」が欠かせない(写真:Getty Images)

 世界でも類を見ない超高齢化の進展により、老人の医療費増大が止まらない日本。その負担は現役世代に重くのしかかる。

 今、病院に問われているのは、質を落とすことなく、いかに効率的な医療を提供できるかだ。日々の病院運営でムリ・ムダ・ムラがあれば徹底的に排除して、経営効率を高める必要がある。

 そこで、日経ビジネスでは、調査会社のケアレビューの協力を得て、経営力に着目した病院のランキングを日本で初めて作成した。

初公開 病院経営力ランキング

公開データで“経営力”を評価

 今回のランキングの最大の特徴は、厚生労働省が2003年度から導入を始めたDPC制度のデータを活用した点だ。DPC制度は、病名や手術方式の違いによって1日当たりの入院医療費を定額払いとするもの。制度に参加する病院は、患者数や平均在院日数などの診療実績が公表されるため、結果的に各病院の経営力をある程度は把握できるようになった。

 全国で8000超ある病院のうち、DPC制度を導入している病院は1580と2割にとどまる(2015年4月時点)。だが、中核病院が多く、急性期医療を提供する病床に限れば、病床数の約6割をカバーしている。

 日経ビジネスではこれまで何度か病院の実力調査を実施してきた。だが、過去の調査はいずれも病院や医師、患者へのアンケートに基づくものだった。そのため、データの信頼性の面では限界があった。その点、DPCデータは国に報告されるデータで、しかも診療報酬と連動することから、不正な届け出は許されず、信頼性が高いと言える。

 ランキングの対象は、2013年4月から2014年3月までの期間に、DPCの対象病院・準備病院および調査協力病院であった計1798施設。同時期の各病院の診療実績は厚労省のウェブサイトで公開されており、それを基にした。そのため、たとえ症例数が多くても、DPC制度に参加していない病院は、対象からは外れている点に留意していただきたい。

 病院の経営力は、「集客力」「効率性・医療の質」「提供体制」「収益力」という4つの要素で分析した。集客力は退院患者数、退院患者数シェア、退院患者数増加率という3指標、効率性・医療の質は患者構成指標、在院日数指標、DPC病床稼働率、機能評価係数II(2014年と2015年)という5指標、提供体制は医師数、看護師数、専門医割合、臨床研修人数、臨床研修競争率という5指標、収益力はDPC入院総収入額、1日当たり単価、1床当たり収入、1患者当たり収入という4指標をベースにした(各指標の見方はランキング結果の末尾を参照)。

 指標ごとに偏差値を算出し、それらの平均値を4つの要素の点数とした。その後、集客力20%、効率性30%、提供体制20%、収益力30%という割合で加重平均して、総合得点とした。

 なお、指標の中の医師数、看護師数、専門医割合については、医療機能情報提供制度に基づく各都道府県の公表データ(2015年3月時点、一部2014年7月時点を含む)を、臨床研修人数、臨床研修競争率については、臨床研修マッチング協議会の2014年度医師臨床研修マッチングの中間結果を活用した。各指標の分析には、全国の急性期病院の診療実績比較サイト「病院情報局」を運営している株式会社ケアレビューが協力した。


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