2015-05-28 ゲーム理論「合理的な豚」のご紹介
■[数学]ゲーム理論「合理的な豚」のご紹介
25日付け産経新聞記事から。
「ゲーム理論」でノーベル賞の米数学者が事故死 ジョン・ナッシュ氏、映画化でアカデミー賞
ロイター通信などによると、米国の数学者、ジョン・ナッシュ氏が23日、交通事故のため死去した。86歳。1928年、米ウェストバージニア州生まれ。米プリンストン大学教授などを歴任、複数の人間や国家などの間の相互作用をモデル化した「ゲーム理論」分野の業績で、94年にノーベル経済学賞を受賞した。
その半生は「ビューティフル・マインド」として映画化され、アカデミー賞作品賞などを受賞した。ニュージャージー州で23日午後、タクシーに乗車中に事故。同乗していた妻のアリシアさん(82)も死亡した。(ニューヨーク支局)
http://www.sankei.com/world/news/150525/wor1505250004-n1.html
うーむ、「ゲーム理論」の”ナッシュ均衡”で有名な米国の数学者、ジョン・ナッシュ氏が23日、交通事故のため死去したそうです。
不肖・木走ですが、IT系零細企業を経営しつつ工学系の学校で外来講師などをしているわけですが、ゲーム理論は商売道具でもあり、考えるのも教えるのも大好きなのであります。
さて、今回はゲーム理論に有名な「合理的な豚」というモデルがあるのですが、それを読者の皆さんにわかりやすくご紹介・ご説明いたしましょう。
数学の苦手な読者のみなさん、大丈夫です、難しい数式はまったく出てきません。
今、豚小屋に大きい豚と小さい豚がいます。
餌場(えさば)にはリンゴが5個あるのですが、いじわるなことにカギが掛っています。
鍵を外すには離れたところにあるスイッチを押さなければなりません。
大きい豚は小さい豚に比べて走るのも早いし食べるのも早いのです。
どちらのブタもスイッチを押して戻ってくるのに、リンゴ0.5個分の体力を消耗するのです。
前提条件は以上です。
図にまとめるとこうです。
さて、大きい豚にしろ、小さい豚にしろ、取れる戦略は2つだけです。
「走らない」(その場でじっとしている)か「走る」(走ってスイッチを押して戻ってくる)です。
ですからこの場合2匹のブタが「走る」「走らない」のケースは4通りになるわけです。
■ケース1:大きい豚も小さい豚もともに走る場合
この場合大きい豚のほうが早く走りますからスイッチを押して早く帰ってくることが可能です。
大きい豚は3個、遅れてきた小さい豚は2個のリンゴを食べることができます。
ただしそれぞれ走っていますから、0.5個分の体力が消費されていますから、それぞれリンゴ2.5個分、1.5個分をゲットしたことになります。
■ケース2:大きい豚が走らないで小さい豚が走る場合
小さい豚が走ってスイッチを押し戻ってくるまでに、大きい豚は5個のリンゴをすべて食べてしまいます。
小さい豚はリンゴ0個のうえに、走って体力を消耗した分、−0.5個分のロスとなります。
足の遅い小さい豚にとって、早食いの大きい豚を残すのは最悪のケースと言えますね。
■ケース3:大きい豚が走って小さい豚が走らない場合
この場合小さい豚が先に食べ始めることができリンゴ3個を食べれます、遅れてきた大きい豚はリンゴ2個だけを食べれますが、体力を消費していますので、1.5個分となります。
■ケース4:大きい豚も小さい豚も走らない場合
この場合鍵が開きませんから、どちらのブタもリンゴをゲットすることはできません、0個です。
さて、ここまでの4つのケースをまとめておきましょう。
大きい豚も小さい豚も1個でも多くのリンゴをゲットできるように「合理的」に戦略を練ることができることが前提です。
さて小さい豚の立場で戦略を練りましょう。
今もし大きい豚が走らない場合、上の表では右側ですね、自分が走ったらゲットできるリンゴは0個、体力がー0.5個消耗するだけです。
また自分が走らなくてもゲットできるリンゴは0個です。
ならば、大きい豚が走らないならば体力を消耗しない分自分も走らない方がいいわけです。
つまり、小さい豚は大きい豚が走らないなら自分も走らない戦略を取ることになります。
次にもし大きい豚が走る場合、上の表では左側ですね、自分も走ったらゲットできるリンゴは2個、体力が−0.5個消耗しますから、1.5個となります。
また大きい豚が走って自分が走らない場合、リンゴは3個ゲットできます、体力も消耗しません。
ならば、大きい豚が走るならば小さい豚は走らない方がいいわけです。
つまり、小さい豚は大きい豚が走る場合、自分は走らない戦略を取ることになります。
ここで小さい豚は、大きい豚が走ろうが走るまいが、自分は走らない方が戦略として正しいことに気づきます。
さて大きい豚の立場で戦略を練ります。
合理的に考えれば小さい豚は走らないことが必定ですので、表の下段ですね、大きい豚は自分が走るか走らないの二択を迫られます。
小さい豚が走らないで自分も走らなければリンゴは0個、自分だけは走ればリンゴは1.5個ゲットできます。
大きい豚は合理的に判断して自分は走る戦略を取ることになります。
以上から、この問題では、「小さい豚は走らず、大きい豚が走る」が最適解となります。
小さい豚、大きい豚の双方とも、ちがう選択をとれば自分が損をしますから、合理的であれば自分からこの戦略を変えることは決してできないのです。
これをナッシュ均衡といいます。
大きい豚に比べて、走る速度も遅く食べる速度も遅い小さい豚が、3個と大きい豚1.5個よりたくさんのリンゴをゲットできるところが、なんとも不思議な「合理的な豚」モデルの理論であります。
つまり、一見大豚のほうが有利な状況であるが、状況的に不利な子豚のほうが戦略上は有利なのであります。
ゲーム理論ではこの他にも追い詰められた方が主導権を握れるという「瀬戸際戦略理論」などがあります。
本エントリーで、読者がお楽しみいただけたならば幸いです、
最後に「ゲーム理論」の生みの親、ジョン・ナッシュ氏のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
(木走まさみず)
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