JERA:「海外の発電事業に注力」 10年後、5倍に
毎日新聞 2015年05月28日 07時00分
東京電力と中部電力の燃料調達・火力発電部門が包括提携して4月に発足した共同事業会社「JERA(ジェラ)」の垣見祐二(かきみ・ゆうじ)社長(前中部電力専務)が、毎日新聞のインタビューに応じた。垣見社長は「国内はそれほど需要は伸びないが、海外で経済成長が進む地域は発電所などが足りない」と述べ、海外の発電事業に注力し、10年後には国内外合わせた発電事業を、発電事業者として世界トップ級の出力1億キロワット規模まで拡大させる構想を明らかにした。
東電、中部電の火力発電事業は現在、国内外で計7400万キロワット。うち海外は計670万キロワットと1割に満たない。1億キロワットの構想を実現するには、海外の発電事業を現在の5倍程度に拡大する必要がある。
垣見社長は「経済成長が期待できる地域のうち、東電と中部電が事業を展開する場所に資金や人を投入したい」と述べ、東南アジアや中東、メキシコを含む北米で事業を拡大する考えを示した。
一方で、少子高齢化などで電力需要が伸び悩む国内市場は「古い火力発電所を高効率の発電所に建て替えれば、燃料費を削減でき、安価な電気を作ることができる」と述べた。来春の電力小売りの全面自由化を見据え、国内では大手エネルギー企業などによる火力発電所の建設計画が相次いでいるが、JERAは発電所の更新で対抗する構えだ。
また、液化天然ガス(LNG)の調達については、世界最大規模の年4000万トンに上る調達量を生かし、売り手への発言力を強め、価格交渉で有利な条件を引き出したいとした。さらにLNGの売買契約には転売禁止条項が付くことが多いことから、同条項の付かない北米産のガスなどの取引を増やして「トレーディング(転売取引)事業を拡大させ、安価な燃料調達につなげたい」と意欲を示した。【安藤大介】
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東京電力と中部電力が燃料調達と火力発電部門で包括提携して、4月に発足した共同事業会社。両社が50%ずつ出資し、東京都内に本社を置く。「JERA」はJAPAN(日本)の頭文字とERA(時代)を組み合わせた造語で、「新時代のエネルギー事業者」を意味する。液化天然ガス(LNG)の調達量は年間4000万トンと世界最大規模で、石炭の調達量も同2000万トンとアジアでトップ5の規模となる。
現時点では、新規の燃料調達と国内外の火力発電事業を手掛ける。2016年夏までに両社の燃料調達や海外発電事業を統合する。火力発電所全体の統合については、包括提携の成果を確認した上で、17年春ごろに判断する。